「孫のため」と良かれと思って差し伸べた資金援助が、まさか親族間の溝を深める要因になるとは――。子どもや孫世代の生活を支援する高齢者が増える一方で、関わり方を誤りトラブルへ発展するケースも少なくありません。資金援助で陥りがちな落とし穴と、良好な家族関係を維持するために親世代が知っておくべき極意を解説します。
「もう、じいちゃんの家には行かない!」〈資産6,000万円・年金20万円〉70歳祖父、孫からの「拒絶」に狼狽。お盆の親族の集まりで起きた崩壊劇 ※写真はイメージです/PIXTA

事件の発端は、親戚の前で「孫比較」

東京都内に住む佐々木修一さん(70歳・仮名)。大手企業を定年退職した元会社員で、妻の恵子さん(68歳・仮名)と2人暮らし。現在の収入は、月20万円の自身の年金と、恵子さんの年金月8万円。住宅ローンなどの負債はなく、一方で金融資産は約6,000万円ほど。生活費は年金で十分に収まる程度で「何もしなければお金は増えている一方だ」と、笑いに変えてよく話していました。

 

そのようななか、「お金は孫のために使えるなら使ったほうがいい」というのが、修一さんの考えでした。力を入れていたのが、長男の孫、翔太くん(13歳・仮名)の中学受験です。塾代や夏期講習、模試代などで、修一さんが負担した金額は2年間で約140万円。受験料や入学後の教材費まで含めれば、さらに支出は増えました。

 

しかし、結果は第一志望、第二志望ともに不合格。現在は滑り止めで受験した私立中学校に通っています。

 

一方、翔太くんの2つ年下の大輔くん(11歳・仮名)も、中学受験に挑戦するため、大手進学塾に通っていました。修一さんは、翔太くんのときと同じように金銭面で支援をしています。

 

大輔くんの成績は塾のなかでもトップクラス。模試のたびに全国レベルの成績を収めていました。これには修一さんも鼻高々。大輔くんの成績をたびたび称賛していました。それはお盆で親戚一同が集まるなかでも。

 

修一さんは、翔太くんの結果を責めるつもりだったわけではありません。少なくとも本人は、そう思っていました。
ただ、親族が集まるたびに、大輔くんの成績を話題にするようになりました。

 

「この前の模試、全国で50番台だったんだってな。大したもんだ」

「これなら、どの難関中でも受かりそうだな」

 

周囲から「すごいね」という声が上がります。その横で、翔太くんは黙っていました。修一さんは、翔太くんにも話を振りました。

 

「翔太はどうなんだ? 今年はちゃんと勉強してるのか」

 

翔太くんは小さな声で「やってる」と答えました。そこで修一さんが言った一言が、家族関係を変えました。

 

「去年、2つとも落ちたんだから。もうあんな情けない思いをしないようにしないとな」

 

翔太くんは何も答えませんでした。しかし、しばらくして席を立ちました。

 

「帰る」

 

母親が追いかけました。その場では、親族も「勉強で疲れているのだろう」と受け止めていました。ところが翌日、修一さんのスマートフォンに長男の妻、彩さん(43歳・仮名)からメッセージが届きました。