国土交通省「令和5年住生活総合調査結果確報集計報告書」によると、シニア世代が「住み替えやリフォームをしない理由」で、最も多いのが「現在の住まいに満足している(34.7%)」、次いで「住み慣れていて思い入れがある(7.9%)」という結果が見えます。マイホームへの愛おしさと、老後の現実的な暮らしやすさの間で揺れるシニアの本音。事例を見ていきましょう。※事例の人物名はすべて仮名です。
2階にはめったに上がりません…住宅ローン8,000万円を払いきった70代夫婦。いまや子ども部屋3室余った郊外の庭付きマイホーム、「いらなかったのでは」という老後の問い (※写真はイメージです/PIXTA)

持ち家という選択、本当に正しかったのか?

持ち家があり、ローンも完済しているという安心感自体はあるものの、日々の暮らしのなかでシンジさん夫妻の胸にはモヤモヤとした問いが広がっています。

 

「8,000万円も払って、家を買う必要があったのだろうか」

 

いまになって思えば、子どもの成長や自分たちの加齢といったライフステージの変化に合わせて、柔軟に部屋のサイズや間取りを変えられる「賃貸住宅」という選択肢もあったのではないか。あるいは、車に乗れなくなった将来のことを見越して、買い物や病院通いが便利な「都心の駅近くのマンション」を購入しておいたほうがよかったのではないか――。

 

さらに夫婦を悩ませているのが、将来の相続問題です。子どもたちはすでにそれぞれ別の場所に居を構えており、郊外の広い中古戸建てを引き取る可能性は低いと見られます。また、昨今の少子化を考えると、こんなに大きな家はいまも需要があるのかという心配も。自分たちが亡くなったあと、管理や処分に困る「負動産」として子どもたちに負担をかけてしまうのではないかという不安が頭をよぎります。

 

引っ越しや自宅の売却も考えるべきだとはわかりつつも、70代を過ぎてからの荷物整理や環境の変化に対するエネルギーはなく、明確なきっかけもないまま、ただ時間が過ぎていってしまうのです。

ライフステージに合わせた住まいの「ダウンサイジング」

子育て期に合わせた広い持ち家が、高齢期になると管理負担や身体的リスクに変わってしまう現象は、多くのシニア世代が直面する現代の課題です。

 

子育て期の満足度だけでなく、子どもが巣立ったあとの30年〜40年という長い老後生活において「広さ」「立地」「管理の手間」がどう影響するかを早期から想定しておくことが大切です。

 

また、70代前後で足腰の負担が増す前に、コンパクトでバリアフリーな住まい(利便性の高いマンションや小さな平屋など)へ住み替える「ダウンサイジング」を選択することは、生活の質を高める有効な手段となります。実家をどう処分・活用するかについて、元気なうちに子ども世代と共有しておくことで、将来の負担やトラブルを防ぐことができるでしょう。

 

長年家族を支えてくれたマイホームへの愛着や思い出は尊重されるべきですが、老後の安心で快適な暮らしを守るためには、住まいに対する柔軟な発想と早めの選択肢の検討が求められています。

 

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