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「子どもに払わせるくらいなら」…親のプライド
健太さんは都内で営業職として働いています。月収は約41万円。手取りは約33万円です。家族は妻と高校生、中学生の子ども2人。住宅ローンの返済に、年々負担が大きくなる教育費。妻のパート収入もありますが、家計は厳しさを増しています。
それでも、母の姿を見た健太さんは「電気代、俺が払うよ」と言いました。しかし、和子さんはすぐに「いい」と返します。
「いや、いいじゃないでしょ。倒れたらどうするの」
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃないだろ。こんな暑いのに」
「あなたにお金を出してもらわないといけないほど、困ってない」
話し合いは堂々巡り。結論が出る気配はありませんでした。だからといって、この暑い中、倒れられたら困ります。健太さんは今のエアコンのスペックを調べ、省エネ性能の高い機種への買い替えを提案しました。さらに自治体の高齢者向け支援制度についても確認したのです。
これまでは「俺が代わりに払う」という態度でどうにかしようと考えていましたが、それに対して和子さんは反発しました。それなら――と、「一緒に考える」という形に変えました。
量販店に一緒に行き、新しいエアコンにすることに決めました。工事費を含めて15万円。費用はすべて和子さん持ちです。そこでようやく「じゃあ、エアコンをつけることは我慢しないようにする」と言ってくれたといいます。
国立社会保障・人口問題研究所『2022年社会保障・人口問題基本調査(生活と支え合いに関する調査)』によると、金銭的な理由で「家の中を快適な温度に保つこと」ができない世帯は4.4%存在します。また、高齢者のみの世帯において、現在の生活費の担い手として同居していない「子ども」を挙げた割合は10.9%にとどまる一方、66.3%が「自分」と回答しています。これらの数値は、子どもに依存せず自立して暮らそうとする高齢者の強い自助意識を映し出しています。
しかし、その裏では老後への強い不安から、命に関わる冷暖房さえ我慢してしまう「心理的困窮」が生じており、単なる金銭援助を超えて「家族が共に解決策を考える姿勢」が求められています。