(※写真はイメージです/PIXTA)
安い家にもリスクがある
現在、夫婦は生活を少しずつ変えています。重い買い物はネットスーパーに切り替えました。月8回利用し、送料などで約3,000円かかります。以前は毎日行っていた買い物も、回数を減らしました。
室内では転倒を防ぐため、家具の配置を変えました。玄関には置き型の手すりを設置し、廊下には滑り止めを敷いています。自治体の相談窓口にも足を運び、今後利用できる支援について確認しています。
ただ、根本的な解決には至っていません。
「家賃が安かったから、ここを選びました。昔の自分たちに間違いがあったとは思いません」
徹さんはそう話します。
公営住宅は、年金生活者にとって大きな支えです。しかし、入居時には問題がなくても、年齢を重ねることで住宅の条件が変わることがあります。
階段、段差、買い物環境、通院のしやすさ――若い頃には気にならなかったことが、老後には大きな負担になります。高齢者の住まいは「いくらで借りられるか」だけではなく、「10年後、20年後も暮らせるか」という視点も重要です。
徹さん夫婦は今も3階で暮らしています。
「いつか1階に移れたらいい。でも、移れる保証はありません」
内閣府『高齢社会に関する意識調査(高齢期の住み替えについて)』によると、住み替えを望むようになった理由の最多は「健康・体力面の不安(24.8%)」です。しかし、実現できていない最大の理由は「資金の不足(33.1%)」であり、経済的要因が大きな障壁となっています。
また、同調査で賃貸住宅に居住している人が望む支援策として、「費用の支援」に次いで「優先入居など住宅確保の支援(168ポイント)」や「身元保証・家賃保証等の支援(162ポイント)」が上位に挙がっています。
中田さん夫婦のように、健康状態の変化から転居を必要としながらも、費用や高齢を理由とした制限に直面する状況は、多くの高齢者世帯に共通する切実な課題です。