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思わぬハプニングと苦渋の選択
このような出費に備えるためにもスキマバイトをしているといっても過言ではありません。昨年の夏には滞在費が8万円を超えました。それだけで、3~4カ月分のバイト収入がなくなります。でも仕方がないと思っていました。しかし、一大事が発生します。正雄さん、単発バイトもできないほど腰を痛めてしまったのです。
「腰を痛めてバイトに行けなくなり、収入が途絶えました。それなのに、次の正月には当たり前のように長男から『今年も帰るよ』と連絡が入ったんです」
「来なくていい」と言えるわけもなく、「待っているよ」と答えました。正月に向けては、死守したかった貯金を取り崩すことになります。物価高の影響で食品も日用品も値上がりしているなかの苦渋の決断――そう言っても過言ではありません。
こうして何とか長男家族を迎えることになりました。そのようななか、高橋さんはほぼ腰は治っているものの、まだ腰が痛むふりをしたといいます。
「正月には『遅めのクリスマス』といって玩具店に行くのが定番。しかし上の子なんかは小学生になって、欲しがるものも高くて……ゲーム機なんて何万円もするでしょ? とても『おもちゃ買ってあげる』なんて、威勢のいいことは言えないんです」
そのような懐事情を優先して、できるだけ外出をしないように、するにしても長男家族だけで――そのように仕向けたわけです。
「情けないですよ。そんな嘘をつかなきゃいけないなんて。今後、孫が成長するにしたがって、支出も増えていくでしょ。きっと長男は『無理をしなくていい』とは言ってくれるけれど、こちらもプライドがある。でも自由になるお金はない――嘘をつくしかないんですよ」
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2025年)』によると、60代単身世帯の50.7%が年金について「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。また、老後の生活資金源(複数回答)として「公的年金(73.2%)」に次いで「就業による収入(29.2%)」や「金融資産の取り崩し(25.1%)」を挙げる人が多く、働くことや貯蓄の取り崩しを前提とした生活設計となっています。
孫の成長は大きな喜びである一方、限られた年金で暮らす高齢者には切実な負担にもなり得ます。互いに無理のない帰り方や付き合い方をオープンに話し合うことが、これからのシニアの家計と絆を守る第一歩といえそうです。