遠方に住む高齢の親と都市部で暮らす子世代。家族の団らんを楽しみに訪ねたはずが、住環境や生活習慣の違いから息苦しさを感じてしまうケースは少なくありません。ある親子の実例から、互いに無理なく心地よい関係を保つ「現代の親子関係のあり方」を考えます。
「お義父さん、もう来ないで」〈年金月15万円〉72歳父、「孫の誕生日会」で感じた「義娘からの拒絶」 ※写真はイメージです/PIXTA

「もう家には来ないでもらったほうがいい」の意味

帰る前日の夜でした。孫を寝かしつけたあと、リビングから義理の娘の声が聞こえました。

 

「お義父さん、気まずかったんじゃない。こちらも正直気を遣うし、子どもの生活リズムも崩れるし、部屋も狭いし……」

 

タワーマンションとはいえ、70平方メートルほどの3LDKです。普段は仕事部屋として使っている部屋を、正夫さんは使わせてもらいました。

 

「次からはホテルを取ってもらったほうがいいかな」

「そんな、家族なのに」

「だったら、もう家には来ないでもらったほうがいいんじゃない。お互いのためにも」

 

その先は聞きたくありませんでした。翌朝、長男は駅まで送ってくれました。「また来てよ」と長男は言ったものの、「いや、東京は疲れるから。しばらくはいいかな」と答えるのが精いっぱいでした。

 

帰宅後、孫から届いた動画には、「ありがとう、おじいちゃん」と笑う姿が映っていました。けれども、その映像を見ても、胸のつかえは消えませんでした。

 

正夫さんは、それから長男の家を訪ねていません。代わりに、誕生日には現金書留と手紙を送っています。そして、長男一家が帰省してきてくれるときだけ、一緒に食卓を囲むそうです。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、妻から見て別居している「夫の父親」との居住距離が「60分以上」離れている割合は43.1%に上り、4割以上が気軽に往来できない遠方に住んでいます。

 

正夫さんのように、遠方に住む親が子どもの家を訪ねる場合、必然的に泊まりがけとなります。しかし、都市部の限られた住空間において、生活リズムが確立している子育て世代が義理の親を宿泊させることは、双方に気を遣わせ、心身の負担となるケースも少なくありません。無理をして訪問するのではなく、子世代が帰省するタイミングで交流するほうが、双方にとって正解といえるのかもしれません。