(※写真はイメージです/PIXTA)
人生初の入院への準備
65歳で同い年のルミさん夫婦は、2人の子どもがすでに独立し、現在は夫婦水入らずの生活を送っています。夫は過去に更年期障害の症状に悩まされた時期があったものの、基本的には健康で風邪をひくのも年に1〜2回程度。定年退職後も再雇用の仕事を続けながら、休日は趣味のゴルフを楽しむなど活力的です。
一方のルミさん自身も大病や大怪我をしたことがなく、「我が家は健康だけが取り柄」と自負してきました。
そんなルミさんでしたが、以前から悪化させていた腰の椎名板ヘルニアの手術が決まり、約2週間、人生で初めて入院することに。
「これまでの人生で入院の経験がなかったので、まずは高額療養費制度の手続きや保険金の給付条件を確認し、2週間でかかるであろう自己負担分のお金をしっかり準備しました。お金の面での準備は万全だったのですが……」
夫に合わせて決めた退院日
ルミさんは退院時のサポートについて夫と打ち合わせをしていました。術後の経過が順調であれば入院期間は約2週間。そこでルミさんは、再雇用の勤務日やゴルフの予定が入っていない「2週間後の夫の都合がいい日」を退院日と見定め、夫にこうお願いしていました。
「退院が決まったら車で迎えに来てほしいから、この日だけは絶対に予定を入れないで空けておいてね」
夫もその場では頷いていましたが、それでもルミさんは心配だったため、入院の10日前、1週間前、前日に夫に念押しして頼み、手術に臨みました。そして予定どおり経過は良好で、事前に予定していた日に退院が決まったのです。
安堵したルミさんが病院から夫に「予定どおり退院が決まったから、迎えをお願いね」と電話をかけたところ、戻ってきたのは思いもよらない返答でした。
「えっ、その日? ずっと行ってみかったコンサートのチケットがもらえたんだけど……」
あらかじめ何度も確認したはずの退院日でした。電話口で激しい口論となり、最終的には夫が渋々コンサートをあきらめて車を出すことで決着したものの、ルミさんはあれほど念押ししたお願いが一切頭に残っていなかった夫の態度に、ただ呆れるばかりだったといいます。
入院中の「思いやりゼロ」
夫への苛立ちは、入院中のやりとりのなかでも深まっていました。
面会に来る夫に対し、ルミさんは入院生活で必要な食べ物やちょっとした日用品の差し入れを頼むことがありました。どれも病院のすぐ近くにあるコンビニやスーパーで簡単に手に入るものばかりです。しかし、夫は指定したものとはまったく違うものを買ってきたり、「忙しくて買えなかった」と手ぶらで現れたりすることが度々ありました。
「大した手間でもない買い物すら頼んだとおりにできない。自由に動けない私に対して、気配りや思いやりも感じられませんでした。情けなさと怒りでいっぱいです」
病人である妻の立場に立ち、少しでも快適に過ごせるよう気を配る姿勢が、夫からは微塵も感じられなかったのです。