遠方に住む高齢の親と都市部で暮らす子世代。家族の団らんを楽しみに訪ねたはずが、住環境や生活習慣の違いから息苦しさを感じてしまうケースは少なくありません。ある親子の実例から、互いに無理なく心地よい関係を保つ「現代の親子関係のあり方」を考えます。
「お義父さん、もう来ないで」〈年金月15万円〉72歳父、「孫の誕生日会」で感じた「義娘からの拒絶」 ※写真はイメージです/PIXTA

孫の誕生日会のために久しぶりの東京へ

「翔太の10歳の誕生日会、来ない? 新幹線のチケット代は出すから」

 

ついこの間生まれたばかりだと思っていた初孫が、もう10歳――東京に住む長男から電話をもらったとき、佐々木正夫さん(72歳・仮名)は素直にうれしかったといいます。秋田県内で一人暮らしをしている正夫さん。妻は5年前に他界しました。現在の生活を支えるのは、月15万円の年金です。毎月の生活費は約14万円で、年齢とともに増えていく医療費なども含めて、年金の支給額のなかで質素倹約を心がけていました。

 

「会えることなんて、めったにないから」と、東京行きを決めた正夫さん。プレゼントにはデパートで人気ブランドの積み木を選びました。長男一家が住むのは、都内湾岸エリアのタワーマンション。購入価格は1億円を超え、長男からは「ローンの返済が大変なんだよ」と聞いています。

 

エントランスでは、顔認証システムを通らなければ中へ入れませんでした。長男が迎えに来るまで、ロビーで待ちました。まるでホテルのような造りで、思わず「知らない世界だな」と言葉が出ました。

 

恐らくすごいスピードで上昇するエレベーターでは、耳がキーンとしました。家に着くと、数組の家族が集まっていました。小学校の友人家族だと紹介されました。義理の娘は笑顔で迎えてくれました。しかし、その笑顔はどこか事務的でした。

 

「スーツケースはこちらへお願いします」

「上着は、この部屋で」

 

案内は丁寧でした。しかし「家族」というより、「来客」として扱われている空気を正夫さんは感じました。孫へプレゼントを渡そうとすると、義理の娘が先に受け取りました。

 

「あとで一緒に開けようね」

 

そう言って棚へ置きました。ほかの子どもたちは最新のゲームや海外ブランドのおもちゃを持ち寄っていました。自分が選んだ積み木は場違いに思えました。料理も、ケータリング会社が並べた洋風メニューばかりでした。紙皿ではなく、ガラス製の食器が並べられています。ワインを飲みながら談笑する大人たちの姿がありました。やはり違う世界に来た気がしました。

 

「秋田は雪、大変ですよね」と一人の父親が話しかけてくれました。正夫さんは「ええ……」と答えたものの、それ以上話は広がりませんでした。

 

内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、日本のシニアが生きがいを感じる時のトップは「子どもや孫など家族との団らんの時」で53.6%を占めます。正夫さんもまた、その喜びを求めて上京した一人でした。しかし、そこにあったのは残酷なまでの「生活水準と価値観の断絶」だったのです。