国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年分において亡くなった人(被相続人)のうち、相続税の申告対象となった割合は10.4%にのぼり、基礎控除が引き下げられた平成27年以降で最高を記録しました。約10人に1人が課税対象となるいま、「相続トラブル」は決して他人事ではありません。90歳祖父と34歳孫の事例を通して、相続をめぐる“思い込み”の危険性をみていきます。
「3億円はどこへ…?」親族から〈資産家〉と噂された90歳祖父の遺品整理で、金庫を開けた34歳孫が絶句したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

最期まで自分の力で生きた「祖父の覚悟」

実家に残されていた医療費の領収書や、介護施設の利用明細を一つひとつ整理するうちに、事情が明らかになってきました。80代に入って足腰が弱ったマサオさんは、手厚いリハビリと24時間の看護体制が整った民間の有料老人ホームに数年間入居していたようです。

 

老人ホームに入居すると、高額な入居一時金に加え、月々の利用料、医療費、介護タクシー代などが継続的にかかります。実際に、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」によれば、要介護状態となった場合に必要と考える公的介護保険の範囲外の資金は、総額で平均3,298万円に達することがわかっています。

 

マサオさんはこうした費用を捻出するために、少しずつ株を売却し、貯蓄を取り崩していたのでした。サトシさんや親族が勝手に膨らませていた「3億円の資産家」というイメージは、マサオさんが現役だったころの古い記憶が作り出した、ただの思い込みに過ぎませんでした。

 

90年という長い人生のなかで、孫であるサトシさんたちに金銭的・肉体的な介護の負担をかけないよう、自分自身の資産を使って、最期まで自分の面倒を見たマサオさん。祖父の思いを知ったサトシさんは、胸の内でそっと感謝し、淡々と手続きを進めました。

 

[参考資料]

・国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」

・生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」