年金月12万円で市営団地に暮らす72歳の女性。月に一度の回転ずしを幸せそうに楽しむ彼女には、子どもたちに突き通している「ある嘘」がありました。「お金がない」とこぼし続けるその言葉の裏には、老後のリアルな不安と、家族を思うがゆえの深い意図が隠されています。現代の親子関係のあり方を考えさせられる、彼女の選択とは。
「私、子どもたちに嘘をついているんです」年金月12万円・市営団地に住む72歳女性、月1回の贅沢「回転ずし」8皿平らげた後に明かした「お金がない」と言い続ける理由 ※写真はイメージです/PIXTA

お金ではなく残したもの

佐藤さんは、子どもたちに一切援助しないと決めているわけではありません。ただ、お金ではなく別の形で関わるようにしています。長男の家も、長女の家も、ドア・トゥ・ドアで1時間以内の距離です。どちらも共働きだから、忙しいときには手作り料理を差し入れします。忙しいときには、数時間孫の面倒を見るために遊びにいくこともあります。

 

「お金を渡すのは簡単です。でも、続けられなくなったらガッカリされるでしょ」

「近い距離にいるからこそ、お金じゃない援助をする。そのほうがお互いのためにいいと思って」

 

忙しい長男や長女の家を助けるために、毎週、行ったり来たり。「結構、足腰を使うから、いい運動になる。私なりの健康法ね」と佐藤さんは笑います。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』(2022年)によると、妻から見て「近いほうの母親」が「60分未満(近居)」の距離に住む割合は72.1%に上ります。また、近居の親から受ける手助けとしては「孫の世話」が最も多く、有配偶の娘の37.3%が母親から支援を受けています。

 

金銭的な援助は互いのプレッシャーになることもありますが、近接性を活かした日常的なサポートは、親自身の健康や生きがいにもつながります。互いの生活を尊重し、無理のない範囲で実生活を助け合う「適度な距離感」が、これからの円満な親子関係を築く鍵となるでしょう。