※写真はイメージです/PIXTA
72歳女性「生活が苦しい」と伝える理由
「私、子どもたちに嘘をついているんです」
そう話すのは、東京都内で一人暮らしをする佐藤美智子さん(72歳・仮名)。月に1度だけ訪れるという回転ずし店にいました。注文したのは8皿。会計は1,200円ほどでした。
「これが今の私にとっての楽しみです。普段は外食なんてしないから」
佐藤さんの収入は、老齢基礎年金と厚生年金を合わせた月約12万円。月の支出とトントンといったところで、場合によっては赤字となるときもあり、貯金を取り崩す必要があります。ただ、実際にはお金に余裕がないわけではないようです。
「老後を見据えてずっと運用をしてきました。亡くなった夫が残した貯金もある」
月10万円ほど取り崩してもお金が無くなるということはないという佐藤さん。しかし、そのことを2人の子どもには打ち明けたことはありません。長男と長女、それぞれ家庭を持ち、子どももいます。孫は3人。しかし子どもたちには、ことあるごとに「年金だけだと厳しい」「最近は何でも高い」と話をし、時には「お金がない」「少しお金貸して」と冗談ぽく言ったこともあったそうです。
「子どもたちからお金をもらいたかったわけではありません。距離を取りたかったんです」
佐藤さんがそう考えるようになったきっかけがあります。数年前、同じ団地に住む友人が、孫への出費で悩んでいました。友人は年金月13万円ほど。夫婦2人暮らしでしたが、孫の誕生日、入学祝い、習い事の援助などで毎月数万円を使っていました。
「最初は誕生日に5,000円のおもちゃだったそうです。それが小学校の入学祝いで3万円、中学生になったらスマートフォン代、高校では制服代。断れなくなっていたんです」
さらに、友人は孫のためにクレジットカードの分割払いも利用していました。佐藤さんは、その姿を見て怖くなったといいます。
「孫はかわいい。でも、かわいい気持ちだけでお金を出していたら、自分の老後がなくなると思いました」
厚生労働省『令和5年簡易生命表』では、65歳時点の平均余命は24.38年、72歳時点では16.12年。あと15年以上の生活が残されているわけです。
「10年なら短いと思う人もいるかもしれません。でも、毎月12万円で暮らす人間には長いです」
佐藤さんは、自分の寿命とお金を冷静に計算しています。現在の貯金430万円は、介護や入院など大きな支出が発生すればすぐに減ります。だからこそ、子どもや孫への援助には線引きをしています。
「一度出すと、それが当たり前になるので、そこは一線を画すようにしたんです」