(※写真はイメージです/PIXTA)
「孫のため」が母娘のすれ違いに
「もう、実家には帰らないから」
そう娘に告げられたのは、東京都内で暮らす主婦・佐々木美智子さん(65歳・仮名)。電話口で聞いた言葉。理由を尋ねても娘はすぐには答えず、ただ最後にこう続けたといいます。
「お母さんは、私のためって言いながら、結局は自分の思い通りにしたかっただけじゃない?」
美智子さんには、一人娘の由佳さん(39歳・仮名)がいます。由佳さんは夫と小学1年生の息子の3人で、埼玉県内のマンションに暮らしています。以前は、週末になると美智子さんが娘一家の家へ行き、孫の世話を手伝っていました。
「仕事が忙しいから助かる」
娘からそう言われたことが、美智子さんの支えになっていました。しかし、関係は少しずつ変わっていきました。きっかけは、孫の教育方針です。美智子さんは、昔ながらの考えから「宿題は先に終わらせる」「ゲームは時間を決める」と孫に注意していました。
一方、由佳さんは「自分で考えさせたい」という方針でした。最初は小さな意見の違いでした。しかし、何度も重なるうちに、娘側には不満が蓄積していったようです。
「孫を怒らないでって言っているのに、昔の子育ての感覚で口を出されるのが嫌だった」
由佳さんは、後になって周囲にそう話していたといいます。一方で美智子さんには別の思いがありました。
「毎週電車に乗って、食事も作ってあげて、お小遣いもあげたりして……少しでも助けになればと思っていたのに」
その気持ちが、娘には負担になっていたのです。美智子さんの夫は10年前に亡くなり、現在の収入は月約15万円の年金のみ。一方で、毎月の生活費は平均すると約14万円。残るお金はほとんどありません。それでも月2万~3万円ほど、孫に関連する出費を重ねていました。
厚生労働省『国民生活基礎調査(2024年)』によると、高齢者世帯の4割が「所得の100%が年金」と回答し、5割強が「生活苦」を訴えています。美智子さん自身も年金への依存度が高く、生活に余裕があるとは言い難い状況のなかで、孫を優先させていたのです。