高齢化に伴い有料老人ホームが増加し、厚生労働省の調査でも在所者数は59万人を超えています。施設へのニーズが高まる一方、入居後に想定外の費用に頭を抱えるケースが少なくありません。ある親子の事例から、知っておくべき「老人ホーム費用のリアル」と見落としがちな落とし穴を見ていきましょう。
母の「老人ホーム費用」…家族にも重くのしかかる
入居から2年。和子さんの要介護度は2から3へ上がりました。夜間の見守りが増え、おむつの使用量も増加します。さらに昨今の物価高により、月額利用料は20万円から22万円に値上げ。毎月の請求額は30万円前後になっています。
株式会社TRデータテクノロジーの調査によると、2024年~2025年にかけて、管理費および食費のいずれか、あるいは両方の値上げを行った企業は約4割に及んだといいます。
長男の大輔さんは、住宅ローン残高が約780万円残っています。子どもは2人いますが、下の子はまだ大学生で、教育費もかさみます。夫婦の老後を見据えて、貯蓄のスピードもワンランク上げたいところ。そのようななか、「母の老人ホーム費用」が心配の種になっています。
「このペースなら、あと何年持つんだろう……」
大輔さんは預金残高を計算する回数が増えました。母にはいつまでも元気でいてほしい、でもお金が――純粋に長生きを願えない自分が情けないといいます。
「利用料の安い施設に転居する手もある。しかし高齢の母のことを考えると、できれば環境を変えたくない」
一方、和子さんは請求を気にして、必要なサービスまで断ることもあるそうです。美容室は3ヵ月に1回。レクリエーションも「今日は結構です」と。新しい下着も買わず、古いものを使い続けています。職員から「遠慮しなくて大丈夫ですよ」と声を掛けられても、「子どもに迷惑はかけられないから」と笑って断るとか。
和子さんは最近、長男にこう漏らしました。
「高齢者の一人暮らしは不安だからと、施設を選んだのに……こんなにもお金のことばかり考える暮らしになるとは思わなかった」