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祖父「お金が厳しい」なんて言えない
暑い日も増えてきました。エアコンを入れたくなりますが、もう少し我慢しようと、今年はまだ一度も使っていないといいます。
「梅雨が明けたらさすがに無理でしょうが、今はまだ……」
そんなときに由美さんから再び電話がありました。
「東京よりお父さんのところのほうが涼しいじゃない。だから今年は2週間くらい、お邪魔したいと思ってる」
(に、2週間。それは長すぎる……)
「今年はテーマパークにも行きたいね。お父さん、車出してくれる?」
正雄さんは思わず黙りました。ガソリン代も、高速代も、入園料も頭に浮かびます。きっとお金は自分たちで出すと言うでしょう。自分がそこにいなければ、お金を出す必要はありません。あったとしても「お小遣い」と、少額渡す程度でしょう。しかし車を出すということは、正雄さん自身もテーマパークにいる。ことあるごとに「お金はいいから」と正雄さんが払うことになる――目に浮かびます。
「そっ、そうか」
歯切れの悪い返事をすると、電話の向こうで少し間が空きました。
「迷惑かな?」
責めるような口調ではありません。しかし、その一言が胸に刺さりました。違います。嫌でも迷惑でもありません。娘一家には会いたいのです。普段は一人、寂しく暮らしているのですから、うれしいに決まっています。
内閣府「令和7年 人々のつながりに関する基礎調査結果」によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は全体で4.5%である一方、「ひとり世帯」では9.8%にのぼります。正雄さんのように、日々の孤独や経済的な不安を抱えながらも、家族への見栄や遠慮から本音を言えない高齢者は少なくないでしょう。
「少し、相談があるんだ」
正雄さんは、勇気を出して物価高で年金生活が厳しいこと、2週間分の光熱費やテーマパーク代を全額見栄を張って出すのは難しいことを正直に打ち明けたのです。由美さんは驚きつつも、「無理させちゃってごめんね。お金は私たちが出すから、ちゃんと受け取って。あと、できるだけお金をかけずに遊ぼう。近くの公園でも子どもたちは喜ぶから」と快諾。見栄を捨てて本音を共有したことで、お互いの絆がより深まる夏休みになりそうだといいます。