「もうすぐ夏休みなんて嘘だろ……?」年金月17万円で暮らす68歳の父は、42歳の長女からの電話に震えました。統計では高齢者世帯の6割が収入の大部分を年金に頼るなか、相次ぐ物価高が生活を直撃しています。愛する孫の帰省がなぜ「絶望」に変わってしまったのか。見栄と不安に揺れるシニアの切実な現実をみていきます。
「もうすぐ夏休みなんて嘘だろ…?」〈年金月17万円〉68歳父が震えた、42歳長女からの電話。愛する孫の帰省が「絶望」でしかなかった理由 ※写真はイメージです/PIXTA

夏休みまで1ヵ月……長女からの電話

「お父さん、今年の夏休みなんだけどね」

 

東北地方で一人暮らしをする鈴木正雄さん(68歳・仮名)の携帯電話に、長女の由美さん(42歳・仮名)から着信が入りました。

 

「子どもたちも楽しみにしてるから」

 

その言葉を聞いた瞬間、正雄さんは返事ができませんでした。

 

(もう、夏休みなんて、嘘だろう……?)

 

「……そうか」と声は出ました。しかし、その後の会話はほとんど頭に入りません。電話を切ると、食卓の上に置いてあった家計簿を開きます。会社員として働き、65歳から月17万円ほどの年金を受け取っています。妻を10年前に亡くし、現在は築36年の戸建てで一人暮らしをしています。

 

一見すると、大きな問題はありません。しかし、現実は違いました。

 

食費2万2,000円。電気・ガス・水道が2万4,000円。固定資産税を月割りにすると約1万円。医療費が1万8,000円。保険や通信費などを合わせると、毎月の支出は14万円前後になります。年金は額面17万円ですが、税金や社会保険料をひくと15万円弱。何とか年金だけで暮らしていける――はずでした。昨年から続く物価高で、以前なら5,000円程度だった電気代が真夏には1万円を超える月も。あらゆるものが値上がりし、年金だけでは賄いきれないこともあります。

 

厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯において「所得の100%が年金」の世帯は4割。「80%~100%未満」を合わせると6割に達します。収入源がほぼ固定される一方で、支出だけが増え続ける状況は、正雄さんにとっても例外ではありません。

 

それでも、娘や孫が帰ってくることは何よりの楽しみでした。しかし物価高は帰省のスタイルも変えていきました。
これまでは「お父さんの負担になるから」と、実家近くのホテルに宿泊していた由美さん家族。しかし昨今、ホテル代が急騰。そこで昨年の帰省から家族で実家に泊まるようになったのです。

 

「今年もよろしくね。亮太も小学生になってよく食べるの。食費はあとで渡すから」

 

由美さんは去年もそう言ってくれました。しかし、家族4人、交通費をかけてわざわざ来てくれています。滞滞中にお金を出させるわけにはいきません。去年も結局、「大丈夫だから」ともらいませんでした。

 

「親としての見栄――ですね」