(※写真はイメージです/PIXTA)
相談件数は43.4万件…移住への関心は過去最多
定年退職を機に、自然豊かな地方でのんびりと暮らしたい。近年、そのような憧れから地方移住を検討する人が急増しています。総務省の調査によれば、全国の移住相談窓口等で受け付けた相談件数は年々増加の一途をたどっており、令和6年度には約43.4万件(窓口相談とイベントの合計)にのぼり、過去最多を記録しました。
しかし、見知らぬ土地に退職金などの老後資金を大きくつぎ込んでしまうと、環境の変化やインフラ不足に直面して後悔した際、取り返しがつかなくなるリスクがあります。地方移住を成功させる秘訣は、万が一都会に戻ることになっても生活が破綻しない「経済的・精神的な余裕」を確保しておくことです。
これから紹介するのは、まさに移住に関心が高まるなか、退職金で高額な新築別荘を買うことはせずに、格安の中古山荘を購入し、地方移住を満喫している65歳男性の事例です。
老後は涼しい場所で…退職金で「400万円の中古山荘」を購入した65歳男性
「東京の猛暑には、もううんざりです。暑いのが大嫌いなので、定年後は涼しい場所で暮らしたかった」
東京都内に住んでいたヒデキさん(仮名・65歳)は、長年勤めたメーカーを定年退職したのち、とある地方の人気別荘地へと移住しました。築40年を超える木造の中古山荘を、約400万円で購入しました。ヒデキさんは退職金1,800万円からこの資金を捻出しました。
ヒデキさんの元同僚や知人のなかには、退職金を高額な新築別荘につぎ込んでしまう人もいたといいます。しかし、ヒデキさんの選択はあくまで堅実なものでした。
夫婦ともに登山が好きで寒さには強かったものの、だからといって退職金をすべて豪華な別荘につぎ込む気はなかったそうです。万が一、地方での暮らしが肌に合わず都会に戻ることになっても、400万円の出費であれば致命的な痛手にはならないと考えたからです。
「もし失敗してもやり直せる金額に抑えておくことが、移住先での精神的な余裕につながると思いました」とヒデキさんは振り返ります。
さらにヒデキさんは、これまで住んでいた都内の持ち家マンションを売却せず、賃貸に出すという選択をしたのです。駅から徒歩圏内にある立地の良さもあり、マンションはすぐに借り手が見つかりました。
ここで注目したいのが、高齢者の収入源の実態です。内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、高齢者の現在の収入源において「財産からの収入(利子、配当金、家賃、地代等)」を得ている人は全体の10.6%と、公的年金(75.7%)や仕事による労働収入(44.6%)と比べて少数にとどまります。
現在、都内のマンションからは毎月約20万円の家賃が入ってきます。ヒデキさんの厚生年金の月額約14万円を合わせれば、毎月の収入は34万円になります。ここからマンションの管理費や維持費、さらに不動産所得が加わることに伴う社会保険料の増額などを差し引く必要はありますが、地方暮らしであれば夫婦の生活費を賄える計算です。