内閣府の調査によると、高齢者の住み替え意向において、「利便性」を求める声がトップ。老後の安心を求めてマイホームを手放す選択は一見正解に思えます。しかし理想と現実のギャップに直面するケースも少なくありません。郊外の戸建てから駅前マンションへと移り住んだ、ある夫婦が迎えた想定外の結末を見ていきます。
「もう限界、家を売りたい……」駅前マンションに引っ越した〈年金月30万円〉70代夫婦。半年後に漏らした「2度目の限界」 (※写真はイメージです/PIXTA)

40年弱暮らしてきた「マイホームを手放す決断」をした理由

「今のうちに売ってしまおう。歩けるうちに動かないと」

 

そう言い出したのは、東京都郊外で暮らしていた佐々木博さん(74歳・仮名)でした。妻の和子さん(72歳・仮名)も反対しませんでした。住まいは築39年の戸建て。子ども2人は独立し、家には夫婦だけ。2階はほとんど使わなくなり、庭木の手入れも負担でした。最寄り駅までは徒歩22分。買い物は車が前提です。

 

最近になって博さんは軽い変形性膝関節症と診断されていました

 

「階段も庭も、あと5年持つ自信がなかったんです」

 

夫婦の年金収入は月約30万円。博さんの厚生年金が約19万円、和子さんが約11万円です。手取りにすると、月26万円ほど。預貯金は約3,200万円あり、見積もりの結果、戸建ては3,000万円ほどで売却できることがわかりました

 

「4,000万円台のマンションであれば、買うことができそう」

 

そのように踏んで物件を探し回った結果、駅から徒歩3分、4,450万円の中古マンションを購入することに。管理費は月2万1,000円、修繕積立金は月1万9,000円。固定資産税は年間約18万円です。

 

「駅前なら車も手放せる。病院もスーパーも歩いて行ける。それだけで老後は楽になると思いました」

 

実際、最初の数ヶ月はその通りでした。買い物は徒歩5分以内で済みます。通院や電車移動も負担になりません。

 

「こんな生活がしたかった」

 

夫婦はそう話していました。

 

内閣府『高齢社会に関する意識調査』によると、高齢者が住み替え先に期待することの1位は「買い物が便利なこと」(994ポイント)、2位は「医療・福祉施設が充実していること」(967ポイント)です。佐々木さんのように、体力への不安を機に、日々の買い物や通院など生活の利便性を求めて住み替える傾向はデータからも明らかです。