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働きたいわけではない。辞められない
「同じ会社で働き続けられるなら、生活もそれほど変わらないと思っていました」
東京都内在住の佐藤健一さん(66歳・仮名)。佐藤さんはメーカーで営業職として38年間勤務しました。定年前のポジションは部長で、年収は900万円ほど。60歳で定年を迎えた際、勤務先も仕事内容も大きく変わらないと考えて再雇用制度を利用し、同じ会社に残ることを選びました。
「転職活動をする年齢でもないし、知っている会社で働くほうが安心でした」
ところが、定年後の状況は想像以上でした。雇用形態は嘱託社員で、契約は1年更新。月収は約21万円、手取りは約17万円へ減少しました。賞与は支給対象外となり、年収は約320万円まで下がったのです。
「給与が下がることは聞いていました。でも、実際にその立場になって“ここまで違うんだ”と認識しました」
担当顧客は引き継がれ、新規営業は若手社員が担当します。会議への参加は必要最小限となり、部下もいなくなりました。基本的に日頃行っている業務は、若手社員の雑用係だといいます。
「責任が軽くなったと言えばそうですが、自分だけ仕事の位置づけが変わった感覚でした」
生活にも変化がありました。住宅ローンは完済していましたが、妻は63歳で無職。年金の受給開始までは生活費を給与に頼る割合が大きく、旅行や外食などの余暇は明らかに回数が減りました。
「現役時代は退職後に夫婦で旅行を楽しもうと話していました。でも、実際は『もう少し働かないと厳しいね』という会話ばかりです」
66歳になった現在も勤務を続けています。
「進んで働きたいわけではありません。ただ、生活費を考えると辞められないというのが本音です」
再雇用後、同年代の元同僚の多くも似た状況だといいます。
「結局みんな、『働きたい』ではなく『働かないと生活設計が崩れる』という理由で残っています」
佐藤さんは最近、再雇用制度について考え方が変わったと話します。
「制度があること自体はありがたい。でも、『同じ会社に残る=現役時代と同じ働き方』ではありませんでした。定年前にもっと収入や働き方を具体的に調べておけばよかったと思います」