(※写真はイメージです/PIXTA)
年収1,200万円の余裕はどこへ
東京都市部の一戸建てに住む高橋達也さん(45歳・仮名)。大手メーカーの課長職を務めています。妻の美紀さん(44歳・仮名)もIT企業で働き、世帯年収は1,200万円。世間一般から見れば完全に「勝ち組」の部類に入りますが、現在の高橋家の家計は、いつ破綻してもおかしくない自転車操業状態に陥っています。
「今月の口座残高、あと5万円しかない」
美紀さんがスマートフォンの画面を見せながら、絞り出すような声で言いました。達也さんはため息をつき、頭を抱えるしかありません。原因は、小学6年生になる一人息子の翔太さん(11歳)の中学受験です。4年生の春から都内の大手進学塾に通わせ始めましたが、学年が上がるにつれて費用は雪だるま式に膨れ上がりました。
現在の塾代は、通常の授業料だけで月額約8万円。そこにクラス別対策講座や、志望校別オープン模試の費用が加わります。苦手科目克服のために個別指導にも通い始めました。さらに夏期講習や冬期講習といった長期休暇の特別講習には、1回につき15万~20万円のまとまった費用が請求されます。
「周りの親御さんがみんな受講させているのに、うちだけ辞退するなんて選択肢はありませんでした。やらないと、その時点で中学受験から脱落するような恐怖感があったんです」と達也さんは振り返ります。
厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯の平均所得金額は820.5万円。一方で生活意識について「苦しい」と答えた世帯は全体の64.3%と、半数を優に超えています。高橋家の場合、住宅ローンが毎月16万円、車の維持費や保険料などで約5万円が固定費として消えていきます。それに加えて年間150万円を超える塾費用が重くのしかかり、日々の食費を極限まで削るしかなくなりました。
現在の高橋家の食卓には、異様な光景が広がっています。夕食のテーブルに並ぶのは、翔太さんの前にだけ置かれた国産牛のステーキ肉。一方、達也さんと美紀さんの前には、白米と具の少ないみそ汁、そして1パック30円の納豆しかありません。
「基本的に肉は子どもだけ。私たちは食費を削れるだけ削っています」
最近は世界情勢もあり、肉全般が値上がりしています。育ち盛りの子どもにだけは栄養をつけさせたいという親心ですが、その実態は、教育費にすべてを吸い取られた結果の、極端な食費削減です。
「40代半ばにもなって、自分が稼いだ家で、肉の一切れも満足に食べられないなんて……でも、ここで塾をやめさせたら、これまでの投資がすべて無駄になってしまう」と達也さんは吐露します。