かつての超低金利時代には「利率見直し方式」が多数派だった奨学金の金利。しかし、近年の日銀による金融政策の転換により、有利子奨学金の金利はかつての約7倍にまで跳ね上がっている。この激変のなかで、過去に選んだ「固定」か「見直し」かという決断が、現在の20代・30代の懐を直撃する死活問題となっている——。現在29歳のAさんの事例を紹介しよう。
母の「固定にしなさい」に従った女子高生に、担任が漏らした「固定にしたの?」の一言…よくわからず〈奨学金の金利〉を選んだ現在29歳の女性、2026年の金利上昇で知った“選択の重み” (※写真はイメージです/PIXTA)

「金利の選択」を委ねられる高校生

Aさんが「利率固定方式か利率見直し方式か」を選んだのは高校3年生のときだった。奨学金申込み手続きの際は、経済や金融に関する知識はもちろん、将来どのような仕事に就き、どれくらいの収入を得るのかもわからない段階で、返済総額に影響する選択を求められる。

 

その選択の重みは、近年の金利上昇によって改めて浮き彫りになっている。日本学生支援機構によると、第二種奨学金の利率固定方式は2026年1月時点で2.512%となり、2022年3月(0.369%)の約7倍まで上昇した。利率見直し方式でも、2020年度には0.002〜0.005%だった利率が、2026年には1.7%を超えるケースが出ている。背景には、日本銀行の金融政策の転換に伴う金利上昇がある。

 

Aさんは母親から「固定にしなさい」といわれ、そのとおりに手続きをした。結果として、現在のような金利上昇局面では、その選択が返済負担の増加を抑える結果につながった。一方、利率見直し方式を選んでいた場合は、5年ごとの利率見直しによって返済額が増える可能性がある。

 

とはいえ、高校3年生の時点で将来の金利動向まで見据えて判断できる人はほとんどいない。「固定にしなさい」というAさんの母親の助言は、金融政策を見越したものではなく、経験に基づく判断だったのだろう。重要なのは、返済額を左右する選択が、十分な知識や情報を持たない段階で行われているという現実だ。

 

こうした「知らないまま始まる」という構造は、奨学金制度が抱える課題の一つでもある。借りる手続きは高校在学中に進む一方で、返済が始まるのは数年後だ。そのため、多くの学生は返済を具体的にイメージできないまま契約を結ぶことになる。

 

さらに、Aさんが利用した大学院の返還免除制度も、公式な説明ではなく研究室の先輩から教わって初めて知ったという点。利率の仕組みや返還免除制度など、将来の返済に大きく関わる情報が、必要なタイミングで十分に届いているとは言い難い。

 

金利が上昇し、奨学金返済の負担が改めて注目されるいまだからこそ、「借りる前になにを伝えるべきか」が問われている。高校3年生だったAさんが、十分な理解のないまま利率方式を選択したという事実は、奨学金制度が抱える課題を浮き彫りにしている。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者

 

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