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クラスメイトと一緒に奨学金を申し込んだ日
Aさんは福岡県北九州市出身の29歳。父と母、姉の4人家族だったが、高校1年生のときに両親が離婚し、母と姉との3人暮らしに。以降、母はパートをしながら家計を支えてくれた。
高校3年生のある日、学校のパソコン室に集められ、みんなで申込書を打ち込んだ。それが、奨学金の申込み手続きだった。
「思ったより多くの人が申し込むんだなって思いました。クラスには、自分と同じようにひとり親の子も多くて。だから自分が借りることについて、特別なことだとは思わなかったですね。そういうものだ、みたいな感じで」
その場で、金利を「利率固定方式にするか利率見直し方式にするか」も選択した。母親に相談すると「固定にしなさい」といわれたため、固定を選んだ。しかし固定方式と見直し方式の違いがなにを意味するのか、当時のAさんには理解できていなかった。担任の先生に「固定にしたの?」と少し驚かれた記憶だけが残っている。
「あれが正しかったのかどうか、いまでもよくわからないです。当時は金利の仕組み自体よく理解していなかったし、とにかく手続きを進めたという感覚でした」
国立大学を目指したのは、学費を少しでも抑えたいという思いがあったからだ。無事、現役で国立大学には受かったものの、合格したのは地元・福岡を離れた県外の学校。一人暮らしをしなければならず、学費だけでなく家賃や生活費もかかることに。借りた奨学金は第一種(無利子)と第二種(有利子)。合わせるとかなりの額になったが、「必要だから借りるしかない」という感覚で、その重さを意識することはなかった。
先輩が教えてくれた奨学金に関する重要情報
Aさんは大学入学当初から大学院進学を視野に入れていた。医療・リハビリ系の学部に在籍し、研究に取り組むなかで、先輩から重要な情報を聞いた。大学院の奨学金は、一定の研究実績を上げることで返済が免除になる制度があるというのだ。
「研究室の先輩が教えてくれて。そういう制度があるから、論文をちゃんと出しておいたほうがいいよって。それで意識して取り組んで、大学院の分は免除になりました。でも、もっと前からその制度を知っていたら、早くから意識できたかもしれない、とは思います」
免除になったのは大学院の奨学金のみで、学部時代の第一種・第二種奨学金の返済は残った。現在返済しているのは月1万8,000円。新卒で入社した会社では、入社後3年間にわたり年10万円の返済支援を受けられる独自の制度があり、その期間は有利子の第二種奨学金の返済に充てていた。
「入社前から奨学金返済の支援が受けられるとの説明は受けていましたが、正直それが入社の決め手だったわけではありません。でも実際に支援を受けると、本当にありがたかったですね」
返済は、Aさんにとってすでに生活の一部になっている。毎月1万8,000円が口座から引き落とされていくが、それを「きつい」と感じることはほとんどないという。
「もう完全に家賃みたいな感じで。固定費として織り込み済みというか、そこに払うお金よりも、結局自分が趣味とか娯楽に使っちゃうお金のほうが問題で。奨学金のせいで生活が苦しいというよりは、自分のせいで出費が多いっていう感じです」
返済期限はまだ先で、繰上げ返済を急ぐ気持ちにもなれない。第一種奨学金は無利子で、第二種も利息負担はそれほど大きくないと考えているからだ。Aさんにとって奨学金の返済は、すでに生活のなかに組み込まれた固定費の一つとなっている。