親の介護が現実味を帯びてきたとき、多くの人が「共倒れを防ぐためにもプロの力を借りたい」「安全な施設で見守ってほしい」と考えます。その一方で、介護を受ける側である親世代の多くが「住み慣れた我が家で最期まで過ごしたい」という願いを抱えているのもまた事実です。※事例の人物名はすべて仮名です。
「お母さん、本当にごめん」入居金2,100万円・高級老人ホームを母(享年83)に勧めた53歳長女の後悔…母の死後、施設長が明かした〈衝撃事実〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護を巡る「支える側」と「委ねる側」のギャップ

マイさんが経験したような葛藤は、多くのシニア世代の家族に共通する根深い課題でもあります。

 

ハルメク生きかた上手研究所が、50歳から87歳の女性474人を対象に実施した「介護に関する意識・実態調査」(2025年)のデータを見ると、介護を必要とする親世代と、それを支える子ども世代との間に存在する明確な意識のズレが浮き彫りになっています。

 

同調査において、「将来、自分が介護を受ける立場になったらどこで暮らしたいか」という問いに対し、最も多くの票を集めたのは「自宅」で、全体の約4割を占めました。長年住み慣れた我が家で、自分らしく最期を迎えたいと願う人が多いことがわかります。

 

その一方で、「もし自分の家族を介護することになった場合、どこで生活してほしいか」を尋ねると、今度は約7割の人が「介護施設」を選択するという、真逆の結果が出ているのです。いざ自分が看る立場に回るとなれば、生活の破綻を防ぐため、あるいは安全面への配慮から、専門組織の力を借りたいと考えるようです。

 

マイさんがミツさんを高級ホームに託した決断も、この「ケアする側の現実的な選択」としてはなんら責められるものではありません。同調査でも、自分が受ける介護の担い手としては「ヘルパーなどの第三者」を希望する人が62.2%で最多となっており、高齢の親世代も「子どもに肉体的な負担をかけ、苦労をさせたい」とは決して思っていないのです。

介護で後悔しないために

では、この介護における後悔をなくすためには、なにが必要なのでしょうか。

 

問題の本質は、施設に預けるという選択そのものにあるのではなく、「お金を払ってプロに任せたから、これで役割は終わった」と、関係性を完結させてしまう点にあるのかもしれません。介護される側の親が本心で求めているのは、管理された空間の快適さ以上に、安心できる身内との「心のつながり」です。

 

どれほど高額で手厚い施設であっても、家族が定期的に顔を出し、他愛もない会話を交わしたり、思い出の品に触れたりするアプローチがあって初めて、そこは単なる「預かり場所」から「第二の我が家」へと変わっていきます。

 

排泄や入浴、医療対応といった物理的なケアはプロの技術に委ね、その代わりに、家族にしかできない「心のケア」にエネルギーを注ぐこと。この役割分担のバランスを丁寧に見極めることこそが、親にとっても子どもにとっても、悔いのないシニアライフの介護を実現するための鍵といえそうです。

 

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