内閣府の「令和6年度 高齢社会対策総合調査」によると、今後の生活における経済的な不安として、「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」を挙げる人が43.1%、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」が36.6%に上っています。 親の施設入居を検討する際、限られた年金や予算の範囲内で「なるべく月額費用の安い施設」を探すのは、当然の心理といえるでしょう。 しかし、それだけで施設を決めてしまうと、将来的に予想外の代償を払うことになりかねません。※事例の人物名はすべて仮名です。
「老人ホームを3回変わることになるとは…」年金月17万円の79歳父、転居のたびに50歳娘が感じた後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

「申し訳なさ」の正体

5年前、地域包括支援センターの担当者は「将来的に移行が必要になる場合がある」と言っていました。「最初から介護付き有料老人ホームという選択肢もある」とも。それでも費用を重視し、サ高住を選んだのです。

 

アズサさんは、あのとき伝えてもらっていた言葉を受け取らなかったことに後悔しました。

 

実際にかかった5年間の費用を整理すると、サ高住での2年間は月12万円で年金内に収まり、住宅型の1年間は月1万円の補填、介護付きの2年間は月5万円の補填、そして2回の転居にかかった費用が約50万円。5年間でアズサさんが実際に出した金額は合計約182万円でした。

 

次に、もし5年前から介護付き有料老人ホームを選んでいた場合を計算しました。月22万円との差額5万円を60ヶ月補填し続けると、300万円。転居費用はゼロ。実際にかかった費用のほうが、約118万円安かった。

 

「お金だけ見れば、間違っていなかった」

 

しかし、その118万円のなかに含まれていないものが、確かにあります。父が2度の引越しのたびに見せた不安そうな顔。新しい環境に慣れようとしてきた時間。転居のたびに口にした「ごめんね」という言葉。それをどう計算すればいいのか、アズサさんにはわかりませんでした。

施設を「いま」だけで選ぶことのリスク

マイ介護ホームの相談室に届く転居理由として最も多いのは、「介護度が上がり、医療サポートが必要になった」「金銭問題で継続入居が難しくなった」「認知症が強まり退去が必要になった」といったケースです。いずれも、入居時には予測しにくかった変化が積み重なった結果です。

 

転居には相応のコストが伴います。新たな施設への入居費用・引っ越し費用が発生し、要介護度が上がった転居先では月額費用も高くなるのが通例です。施設によっては入居一時金の返還規定も複雑で、全額が戻ってくるとは限りません。3回の転居ともなると、その累積負担は小さくありません。

 

高齢者への影響も深刻です。住環境の変化は高齢者に大きなストレスを与えやすく、特に認知症の方は症状が重くなる場合があります。転居回数を減らすこと自体が、本人のQOLを守ることに直結します。

 

「いまの費用が安い施設」を選ぶことは、短期的には合理的です。しかし疾患の進行によって施設を変わるたびに費用が上がる構造では、長期的な累計コストが高くなることがあります。相談窓口で将来の見通しを説明されたとしても、「いまは元気だから」という理由でその情報を後回しにしてしまいやすい——アズサさんの経験はその落とし穴を示しています。

 

アズサさんはいま、3回目の施設でオウジロウさんの様子を見ながら、「この施設を最初から選んでいれば」と思います。介護付き有料老人ホームは月額こそ高いですが、要介護度が上がっても同じ施設で対応できることが多く、転居の必要性が低くなります。転居コストや本人の負担、そして長期的な月額の累計を考えると、最初から選ぶほうが合理的な場合もあります。

 

退院直後や要支援の段階で施設を急いで選ぶ場面では、「いますぐ入れる」「いまの費用で収まる」という条件に目が向きがちです。しかし「疾患が進んだ場合も同じ施設で対応できるか」「要介護度が上がったとき別の施設に移る必要があるか」を同じ重みで確認しておくことが、後悔を減らす第一歩になります。

 

【注目のセミナー情報】​​​

【資産運用】7月22日(水)オンライン開催
《2026年・富裕層のマネー戦略》
「投資信託×保険」の資産形成アプローチ

 

【アメリカ不動産投資】7月27日(土)オンライン開催
過去10年間で住宅価格が1.9倍に上昇したエリアも!
「減価償却×ドル建て資産」を活用した資産形成戦略