(※写真はイメージです/PIXTA)
再び、義娘と口論に
数日後。夕食中の何気ない会話から、再び口論になります。和子さんがまた孫の進路について意見を述べたとき、美咲さんは箸を置きました。
「これ以上一緒に暮らせません」
部屋に響いた声は、家族全員を凍り付かせました。
「私たちの人生に踏み込まないでください」
和子さんは言葉を失いました。助けを求めるように息子を見ましたが、健太さんは目を伏せたままでした。長い沈黙の後、ようやく息子が口を開きます。
「母さん……少し距離を置こう」
かつて暮らしていた自宅はすでに売却済みです。和子さんは健太さんの援助を受けて、自宅からも程近い場所にある、月7万5,000円の高齢者向け賃貸住宅へ引っ越しました。引っ越しに伴う費用は健太さんが支払いましたが、年金15万円から家賃、光熱費、医療費を支払う生活は、以前よりも厳しいものです。同居前、「家族だから安心」と考えていた老後設計は完全に崩れ去りました。
厚生労働省の『国民生活基礎調査(令和6年)』によると、高齢者の一人暮らしは878万6千世帯にのぼり、全体の31.8%を占めています。昭和55年(1980年)時点ではわずか10.7%だったことからも、高齢者の単身化が急激に進んでいることがわかります。
「家族だから大丈夫」という安易な同居は、互いの生活スタイルや価値観の違いから、双方に深い傷を残すリスクを孕んでいます。長寿化が進み、誰もが「おひとりさま老後」を迎える可能性が高い現代において、親と子は適切な距離感を保ちながら、いざという時のサポート体制や資金計画を冷静に設計しておく必要があるのです。