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露呈した1,500万円の使途と、夫婦の歩み寄り
しかし、退職後は給与収入がなくなります。家計管理をしていた由美さんが資金の変化に気づくのは時間の問題でした。
「車を買ったことより、相談がなかったことがショックでした」
由美さんは当時をそう語ります。一方、高橋さんにも言い分がありました。
「退職金は自分が働いて得たお金という感覚がありました。最後に一度くらい夢をかなえたいと思ったんです」
夫婦の話し合いは何度も続きました。問題は車そのものではありませんでした。老後の生活設計を共有しないまま、大きな支出が行われたことだったのです。由美さんは家計表を作り直しました。年金収入、生活費、医療費の備え、介護費用の想定額などを一つひとつ確認していきました。その結果、車を保有したままでも生活は直ちに破綻しないことがわかりました。
ただし、旅行費や将来の予備資金には影響が出ます。そこで夫婦は妥協点を探ることにします。ガレージはより安い場所へ変更。車の維持費も年間予算を設定し、それを超える支出は夫婦で相談することにしました。
現在、高橋さんは週に一度ほど愛車を走らせています。由美さんも一度だけ同乗したそうです。
「乗ってみたら思ったより楽しそうでした。でも次からは先に相談してほしいですね」
そう笑います。高橋さんも苦笑いを浮かべました。
「隠し通せると思っていたわけじゃないんです。ただ、反対されるのが怖かったんです」
老後資金をめぐる問題は、お金の多寡だけで起きるわけではありません。長年連れ添った夫婦であっても、お金に対する考え方や優先順位は異なります。高橋さん夫妻の場合、最終的には話し合いによって着地点を見つけましたが、一歩間違えれば夫婦関係そのものに大きな亀裂が入ってしまったかもしれません。
退職金は人生のご褒美であると同時に、夫婦の老後を支える大切な資金。その使い道を決める際に必要なのは、互いに納得できるまで話し合う時間だといえるでしょう。