老後を見据えて購入したマンションが、年金生活の重荷になる――。とりわけ2000年代半ばのタワーマンションブーム期に購入した世代は、今、修繕積立金や管理費の急上昇という新たな課題に直面しているのです。都心タワマンで老後を迎えた68歳夫婦の事例から、その現実をみていきます。
住宅ローン完済なのに暗転…5,800万円で「都心タワマン」を買った68歳夫婦の誤算、「年金生活崩壊」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「これで老後は安心」のはずだった

「当時は、本当にいい買い物をしたと思っていたんです」

 

東京都中央区のタワーマンションで暮らす佐藤隆夫さん(68歳・仮名)。購入したのは2007年。当時49歳でした。勤務先は大手メーカー。当時の年収は1,000万円を超えていました。

 

子ども2人は高校生と中学生。教育費がかかる時期でしたが、将来の資産価値を期待し、賃貸マンションから都心のタワーマンションへ住み替えました。購入価格は5,800万円。頭金を払い、残り3,500万円の住宅ローンを組みました。駅徒歩3分。大型スーパー近接で、総合病院も徒歩圏内です。

 

営業担当者からはこう説明されたといいます。

 

「都心のタワーマンションは資産価値が落ちにくいですよ。老後まで安心して住めます」

 

佐藤さんも納得して契約しました。住宅ローン返済のほか、管理費は月1万8,000円。修繕積立金は月7,000円。合わせても2万5,000円ほどがかかります。それでも住宅ローンを払っていても、十分に余裕がありました。ところが、そんな余裕は徐々に変わり始めます。

通知が届くたびに増える

最初の値上げは築10年を迎えたころでした。修繕積立金が月7,000円から1万5,000円へ上昇。その後も段階的な改定が続きました。築18年となった現在、修繕積立金は月3万2,000円、管理費は2万7,000円へ上がりました。毎月の維持費は合計5万9,000円。購入当初の2倍を超えています。

 

「管理組合から通知が来るたびに嫌な予感がするようになりました」

 

佐藤さんは苦笑します。背景には建設コストの上昇があります。人件費や資材価格の高騰に加え、高層マンション特有の設備更新費も膨らんでいます。大型エレベーター、給排水設備、防災システム、共用施設――どれも維持に多額の費用がかかります。

 

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、全国のマンションの36.6%で修繕積立金が計画額に対し不足しています。さらに、全体の47.1%が築年数に応じて段階的に積立金を引き上げる「段階増額積立方式」を採用しています。資材や人件費の高騰も重なり、佐藤さんのように当初の想定を大幅に超える維持費の負担増に直面し、老後の生活設計を脅かされる深刻なケースが全国で急増しているのです。