年金だけで暮らす高齢者が増えるなか、住居費の負担は老後生活を左右する大きな課題となっています。長年、民間賃賃マンションでの暮らしにこだわってきた人でも、収入や家賃の問題から住み替えを迫られるケースは少なくありません住環境への固定観念を抱いていたひとりの女性の選択を通じて、老後の住まいについて考えていきます。
「嫌よ、そんな古臭いところ」団地住まいを冷笑していた、都会生まれ・都会育ちの68歳女性。「年金月15万円」の終着点 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいの選択肢となる「公営住宅」とは

由紀子さんの生活を救った都営住宅をはじめとする「公営住宅」は、公営住宅法に基づき、地方公共団体(都道府県や市区町村)が建設・管理する賃貸住宅です。主に低所得者や高齢者など、住まいの確保に困っている人に向けて提供されています。

 

最大の特徴は「応能応益家賃制度」を採用している点です。入居者の所得や住宅の規模、立地などを総合的に考慮して家賃が算定されるため、年金収入のみとなった場合でも無理のない負担で住み続けることが可能です。

 

入居にあたっては、主に以下のような条件を満たす必要があります。

 

第一に「所得制限」。公営住宅の収入基準は全国共通の政令により、原則として「一般階層」で月収15万8,000円以下、「裁量世帯(高齢者など)」で月収25万9,000円以下とされています。さらに具体的な例として都営住宅の単身者向けの場合、年間の所得金額が「一般区分」で189万6,000円以下、60歳以上などの「特別区分」で256万8,000円以下であることが求められます。

 

第二に「住宅に困窮していること」。原則として持ち家がないことや、他の公的住宅に現在住んでいないことなどが条件となります。

 

また、公営団地は「家族向け」のイメージが強いかもしれませんが、都営住宅であれば都内に3年以上居住している60歳以上であれば、単身でも申し込むことが可能です。さらに、高齢者に配慮した手すりや緊急通報システムを備えた「シルバーピア(高齢者集合住宅)」が用意されている場合もあります。

 

運営主体によって、都道府県が管理する「都営住宅」や「県営住宅」、市区町村が管理する「市営住宅」などに分かれています。由紀子さんのように「古臭い」という固定観念を一度横に置き、自身の住む自治体の窓口やホームページで制度や募集状況を確認することは、安心できる老後の資金計画を立てるうえで有効な一歩となるでしょう。