近年、シニア世代が孫のために費やす「孫消費」の金額が増加傾向にあります。イベント時だけでなく、日常的な訪問の際にも手渡されるお小遣いは、祖父母にとって「惜しみたくない支出」になりがちです。しかし、限られた年金や貯蓄の中で無理を重ねる生活は、老後の基盤を静かに揺るがすリスクを孕んでいる点も見逃せません。
「お小遣いがないと来てくれないの…?」年金180万円・貯蓄900万円の74歳祖母、〈孫との距離〉に気づいた瞬間 (※写真はイメージです/PIXTA)

「孫消費」年間18万円が示す現実

チトセさんの体験は、多くのシニア世代に共通する問題を照らし出しています。

 

株式会社ハルメクホールディングスが2025年3月に実施した「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」によると、シニア女性が孫に使うお金の年間平均は約18万円で、2023年の調査と比べて約3.7万円増加しました。支出内訳の1位は「お小遣いとして現金を渡す(お年玉・お盆玉含む)」で、年間20万円以上を孫に使うと回答した割合も24.3%にのぼります。孫への出費は、多くのシニア世代にとって「惜しまない支出」になっています。

 

しかし、このお金が長期にわたって積み重なると、老後の家計に静かな圧力をかけます。チトセさんのケースを試算すると、月20万円の年金から生活費を差し引いた余剰分と、貯蓄900万円の取り崩しで現在は成り立っています。しかし、孫への年間18万円(月平均1.5万円)に加え、医療費・介護保険料が今後増加した場合、長期的な資産の減少ペースは当初の想定を上回る可能性があります。100歳まで生きるとすれば、あと26年。その間に貯蓄が底をつくリスクは、決して他人事ではありません。

 

さらに深刻なのは、お金の問題より先にある「孤立」の問題です。長寿科学振興財団が2025年に公開した「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」によれば、孤立死を身近に感じると答えた65歳以上の高齢者は全体の48.9%。一人暮らしに限ると73.4%にのぼります。チトセさんのように夫を亡くし、日々の交流が孫との時間に集約されていく高齢者にとって、その関係が「お金ありき」であったと気づく瞬間は、孤立感をより深刻なものにします。

お金でつながる関係の、限界と可能性

チトセさんはその後、孫への関わり方を少しずつ変えはじめました。お小遣いを渡す回数を減らし、代わりに一緒に料理をしたり、昔の写真を見ながら家族の話をしたりする時間を増やすようにしました。最初は気乗りしない様子だった孫たちも、少しずつ変化に慣れてきたと言います。

 

「お金を渡すことが悪いとは思っていない。ただ、それだけになってしまってはいけないと、ようやくわかった気がします」とチトセさんは穏やかに話します。

 

孫への愛情は本物であっても、それをお金という形にだけ頼り続けると、関係はいつか「お金があるかどうか」で揺らぐようになります。高齢者の資産は老後を支える最後の砦であり、孫や家族との関係構築にすべてを注ぎ込む必要はありません。贈る金額より、ともに過ごす時間や言葉のほうが、長く記憶に残るものです。

 

老後の孤立を防ぐために必要なのは、お金ではなく関係の質です。チトセさんの「気づき」は、多くのシニア世代と、その家族に届いてほしいメッセージでもあります。

 

【注目のセミナー情報】​​​

【減価償却】6月25日(木)オンライン開催※本日開催
利益が出ている企業は何を選ぶべきか?
4つの「法人向け決算対策商品」を税理士が徹底比較

 

【国内不動産】6月25日(木)オンライン開催※本日開催
元国税局・税理士×銀行融資担当者が解説
「利上げフェーズ」の中古アパート経営と融資戦略

 

【資産運用】6月27日(土)オンライン開催
あなたの代わりに資産が働く!
「おまかせ投資」のスキーム5選を公開