親が亡くなったあとに残される「実家」が、思わぬ重荷となるケースが増えています。人口減少や空き家増加が社会問題となるなか、相続した家を手放せず苦しむ人も少なくありません。本記事では、手取り15万円で暮らす50代独身男性の事例を通じて、空き家相続が老後資金や人生設計に与える深刻な影響について考えます。
「もう限界です…」〈手取り15万円〉56歳独身男性を襲う「実家の固定資産税」。親亡き後に始まった「売れない不動産」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

実家を売って老後資金に…期待が大きく外れて

「税金の納付書が届くたびに、ため息しか出ません」

 

そう話すのは、田中 恒一さん(56歳・仮名)です。首都圏の中小企業で働く契約社員。手取り月収は約15万円。家賃4万8,000円のアパートで一人暮らしを続けています。

 

贅沢な生活をしていたわけではありません。食費は月3万円前後。通信費は格安プランに変更済み。車も持っていません。それでも毎月の貯蓄額は多くて1万円程度でした。そんな田中さんの生活が大きく変わったのは、3年前のことです。

 

父親が亡くなりました。その数ヵ月後には母親も他界。相続人は一人息子の田中さんだけでした。残されたのは、地方都市の郊外に建つ築48年の実家でした。

 

相続手続きそのものは比較的スムーズに終わりました。問題はその後です。田中さんは当初、「家を売れば多少は老後資金の足しになるだろう」と考えていました。ところが、不動産会社の査定結果は予想外でした。

 

「建物の価値はほぼゼロです。土地も需要がありません」

 

最寄り駅まで車で20分以上。周辺では高齢化が進み、空き家も増えていました。売却価格は数十万円程度と見込まれました。しかし解体費用だけで150万円以上かかると説明されます。

 

「売るためにお金を払うんですか?」と思わず聞き返したといいます。複数の不動産会社に相談しましたが、結果は同じ。買い手は現れません。相続した実家は資産ではなく、維持費だけが発生する存在になっていました。

 

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は過去最多の900万2千戸に達しました。特に世帯が所有する空き家の約6割が「相続・贈与」による取得であり、さらにその約7割が1980年以前に建てられた古い物件です。田中さんのように、古い実家を相続して手放せずに苦しむケースは全国で急増しています。