夫に先立たれたあと、初めて家庭のお金の実態を知る高齢女性は少なくありません。近年は資産運用や企業年金の多様化によって、家計の全体像を夫婦で共有できていないケースも増えています。長年専業主婦として暮らしてきた女性が、夫の突然死をきっかけに直面した「遺族年金の誤算」と、その先に待っていた現実をみていきます。
亡夫しか知らなかったこと
四十九日を過ぎた頃です。銀行口座の整理を進めていた由紀子さんは、見慣れない入金記録に気づきました。毎月4万円前後。年金とは別です。通帳には証券会社名が記載されていました。
「これ、何のお金なの……」
調べるうちに、夫が保有していた株式の配当金だとわかりました。しかし、どこの証券会社なのかわからない。口座番号も知らない。ログイン方法もわからない。スマートフォンにはロックがかかっていました。パソコンも開けません。
結婚して40年以上。資産管理はほぼ隆一さんが担当していました。実際にどのようにしているか、話したことはほとんどなかったのです。
さらに隆一さんが亡くなったあと、月5万円の企業年金を受け取っていたことがわかりました。
「何をしたらいいの!」
「どこに連絡すべき?」
そう、慌てふためいている間に、時間だけが過ぎていったといいます。
「この先どうなるのか、不安になる前に、自分が何も知らなかったことのほうが怖かった」と由紀子さんはそう話します。
近年は新NISAの普及もあり、高齢世帯でも複数の金融機関を利用するケースは珍しくありません。企業年金や個人型確定拠出年金、投資信託、配当金など、収入源も細分化しています。その一方で、管理を夫婦のどちらか一方に任せきりにする家庭も少なくありません。
隆一さんが亡くなってから1年ほどが経ち、ようやく資産の全体像が把握できたという由紀子さん。ようやく「一人でも大丈夫だ」と思えるようになったといいます。