高齢の親を狙う特殊詐欺や悪質商法が後を絶たないなか、離れて暮らす子どもによる親の「見守りサービス」も増加。しかし心配が行き過ぎたとき、親子関係に思わぬ亀裂を生むこともあります。40代長男による見守りがいつしか監視へと変わっていった70代夫婦の事例を通して、高齢期の親子関係の難しさをみていきます。
「頼む、もうやめてくれ!」75歳父の悲鳴。原因はアプリによる44歳長男の徹底監視「昨日、スーパーで3時間も何やっていたの?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

父が消したアプリ

そして決定的なことが起きます。隆夫さんは古くからの友人4人と1泊2日の温泉旅行へ出かけました。久しぶりの再会でした。ところが宿に到着してまもなく電話が鳴ります。

 

達也さんでした。

 

「父さん、なんで長野にいるの? 聞いてないけど」

 

隆夫さんは言いました。

 

「別に報告義務はないだろう」

 

すると達也さんの声色が変わりました。

 

「もし途中で倒れたらどうするの?」

「何かあったら誰が責任取るの?」

 

隆夫さんも感情的になります。

 

「そんなに心配される覚えはない!」

 

電話は険悪なまま終わりました。帰宅後、隆夫さんはスマートフォンを開きます。位置共有アプリや予定共有アプリを削除し、口座共有サービスも解除しました。数日後、そのことに気付いた達也さんから何十件も着信が入ります。

 

「なんで消した?」

「危ないだろ」

「勝手なことするなよ」

 

現在、親子の関係は以前ほど親密ではありません。絶縁しているわけではありません。年4~5回の帰省は、盆と正月だけになりました。連絡も取っていますが、どこかぎこちなさが残っています。

 

親子、それぞれが心配をしつつも、越えてはいけない境界線があるもの。しかし親が年を重ねるほど、その境界線は見えにくくなり、ときには気づかぬうちに一線を越えてしまっていることも。家族であっても適切な距離感を保つことが大切です。