(※写真はイメージです/PIXTA)
父が消したアプリ
そして決定的なことが起きます。隆夫さんは古くからの友人4人と1泊2日の温泉旅行へ出かけました。久しぶりの再会でした。ところが宿に到着してまもなく電話が鳴ります。
達也さんでした。
「父さん、なんで長野にいるの? 聞いてないけど」
隆夫さんは言いました。
「別に報告義務はないだろう」
すると達也さんの声色が変わりました。
「もし途中で倒れたらどうするの?」
「何かあったら誰が責任取るの?」
隆夫さんも感情的になります。
「そんなに心配される覚えはない!」
電話は険悪なまま終わりました。帰宅後、隆夫さんはスマートフォンを開きます。位置共有アプリや予定共有アプリを削除し、口座共有サービスも解除しました。数日後、そのことに気付いた達也さんから何十件も着信が入ります。
「なんで消した?」
「危ないだろ」
「勝手なことするなよ」
現在、親子の関係は以前ほど親密ではありません。絶縁しているわけではありません。年4~5回の帰省は、盆と正月だけになりました。連絡も取っていますが、どこかぎこちなさが残っています。
親子、それぞれが心配をしつつも、越えてはいけない境界線があるもの。しかし親が年を重ねるほど、その境界線は見えにくくなり、ときには気づかぬうちに一線を越えてしまっていることも。家族であっても適切な距離感を保つことが大切です。