熟年離婚は今や珍しい話ではありません。長年の不満を抱えた末、退職金や年金分割制度を見据えて離婚を選ぶケースも増えています。しかし、その判断が思わぬ誤算につながることもあります。年金分割への期待を支えに60歳で離婚を決断した女性の事例を通じて、老後資金設計の見落としが招く現実をみていきます。
「これでやっと自由になれる!」〈退職金2,200万円〉60歳夫を捨てた妻。〈年金分割〉をアテにした生活がわずか半年で破綻した「残酷理由」

離婚から半年後に痛感する想定外

離婚から半年後。由美子さんは改めて自分の資産状況を確認しました。

 

引っ越し費用、家具家電の買い替え、保証会社への支払い、賃貸契約の初期費用。財産分与として手にした多額の現金を前に、気が大きくなっていたこともあり、旅行や外食など「自由になった記念」の支出も重なりました。気が付けば、思っていた以上に現金は減っていたのです。通帳残高を見ながら、由美子さんは思わず声を漏らしました。

 

「こんなはずじゃなかった……」

 

その頃、和彦さんは再雇用で働き続けていました。給与は現役時代より下がったものの、月22万円の収入に加え、退職金の大部分も手元に残っています。生活費も単身者向けの小さなマンションへ移ったことで大幅に圧縮できていました。

 

由美子さんは初めて気づきます。自分は年金分割制度を正しく理解しないまま、離婚後の生活設計を組み立てていたのだと。

 

もちろん離婚そのものを後悔しているわけではありません。夫婦関係への不満は本物でした。ただ、「年金分割があるから安心」という認識だけは現実と大きく違っていたのです。

 

熟年離婚件数は今後も増えていくとみられています。しかし老後の離婚では、感情の整理と同じくらい、お金の計算が重要になります。制度への思い込みは、離婚後になって初めて表面化します。由美子さんが通帳を見つめながら漏らした「こんなはずじゃなかった」という言葉は、決して特別なケースではないのかもしれません。