年金月19万円で老人ホームに暮らす79歳の父親。そんな父を喜ばせようと、「父の日」に長男家族が持参した「愛のこもった手土産」が、残酷な退去通告の引き金に――老人ホーム入居の思わぬ落とし穴をみていきます。
父の日なんて祝うんじゃなかった…〈年金月19万円〉老人ホーム入居の79歳父に、残酷な退去通告。原因は長男家族の愛のこもった手土産 (※写真はイメージです/PIXTA)

「当施設ではこれ以上お預かりできません」突きつけられた残酷な退去通告

昭男さんは高齢のため肺炎の回復が遅れ、入退院を繰り返すようになりました。そして入院から3ヵ月が経過した頃、老人ホームの施設長から呼び出され、耳を疑う宣告を受けます。

 

「大変申し上げにくいのですが……お父様には、当施設をご退去いただくことになります」

 

実は、多くの老人ホームには厳しい「退去要件」が存在します。昭男さんのケースでは、以下の3点が施設の対応限界を超えてしまったのです。

 

長期入院による規定超過:多くの施設では、入院期間が「3ヵ月以上」に及ぶと契約解除となる規定があります。

医療行為の必要性:誤嚥性肺炎を繰り返した結果、胃ろうの増設や24時間のたん吸引が必要となり、施設に配置されている看護師の対応範囲を超えてしまいました。

誤嚥リスクの常態化:施設側が「安全な食事提供が困難」と判断した場合、安全配慮義務の観点から退去を推奨されるケースがあります。

「確認さえしていれば…」施設との情報共有が命綱

現在、昭男さんは医療依存度の高い人が入る別の施設に移りましたが、費用は以前の老人ホームより大幅に跳ね上がり、健一さんの家計からも毎月数万円の持ち出しが発生しています。

 

高齢の親が施設に入ると、家族は「少しでも楽しく過ごしてほしい」と差し入れをしたくなります。しかし、本人の体調や嚥下機能の変化を無視した「家族の善意」は、時に命の危険や退去という取り返しのつかないリスクにつながります。

 

食べる楽しみは大切ですが、差し入れをする際は必ず事前に施設の職員へ相談し、形状や量を確認することが不可欠です。

 

「父を喜ばせたかっただけなんです。あのとき、職員さんに『和菓子を食べさせてもいいか』とひと言確認すればよかったです」

 

昨年の父の日の出来事を思い出すたび、健一さんは深い後悔の念に苛まれるといいます。