(※写真はイメージです/PIXTA)
「いつもありがとう」長男家族からのプレゼント
都内の企業で働く斉藤健一さん(仮名・50歳)の父・昭男さん(仮名・79歳)は、3年前から地元の介護付き有料老人ホームで暮らしていました。
厚生労働省『令和6年 社会福祉施設等調査』によると、有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を除く)の施設数は18,460施設。これらの施設の在所者数(入所者数)は約56.7万人です。単純に計算すると、高齢者の1.5%が、有料老人ホームに入居していることになります。
昭男さんの年金は月19万円ほど。入居費用は月3万~4万円の取り崩しで賄っていたといいます。そんななか、事件が起きたのは、昨年の6月。健一さんは「父の日」のお祝いとして、妻と小学生の娘を連れて施設へ面会に行きました。手元には、昭男さんが昔から大好きだった老舗の和菓子(お餅や最中)がありました。
「おお、わざわざ来てくれたのか。これ、大好物なんだよ」
孫から似顔絵を手渡され、好物をうれしそうに頬張る昭男さん。その笑顔を見た瞬間、健一さんは「これくらいしか親孝行してあげられないから、持ってきてよかった」と胸がいっぱいになりました。
深夜の電話と緊急搬送…「よかれと思って」が招いた悲劇
しかし、その夜、施設から健一さんの携帯に切羽詰まった電話が入りました。昭男さんが夕食後に激しくむせ込み、発熱したため、急遽病院へ救急搬送されたというのです。
慌てて病院へ駆けつけると、医師から「誤嚥性肺炎の疑い」と告げられました。実は、昭男さんは健一さんが面会時に差し入れた和菓子の欠片をうまく飲み込めず、気管に入り込んでしまっていたのです。
医師は健一さんに、年齢とともに飲み込む力(嚥下機能)は日によって変わること、体調によっては普段食べられるものでも危険になることを静かに説明しました。
「少しだけなら大丈夫だと思っていました……私のせいですか」
激しく戸惑い、後悔する健一さん。しかし、本当の悲劇はここからでした。