定年退職を迎え、十分な退職金を得て安心した老後を送るはずだった一人の男性。しかし、愛する初孫への度重なる経済的援助を独断で続けた結果、わずか数年で資産は激減し、老後破綻の危機に直面することになります。一体なぜ、大切な老後資金を使い果たしてしまったのでしょうか。老後に陥りやすい家計の落とし穴をみていきます。
「じぃじ、次はいつハワイ行く?」〈退職金2,500万円〉〈年金月25万円想定〉初孫のおねだりに応え続けた64歳祖父、預金残高「1,850,300円」の衝撃 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金2,500万円と、初孫の誕生

「当時は退職金が入った通帳を見て、十分な資金があると錯覚していました」

 

都内の一戸建てに住む佐藤隆さん(仮名・64歳)は、現在は近所の物流倉庫で週4日の夜勤パート勤務をしています。

 

5年前、隆さんは大手メーカーを60歳で定年退職し、口座には退職金2,500万円が振り込まれました。 住宅ローンはすでに完済しており、65歳から受け取れる年金は夫婦で25万円を超える予定。 現役時代のような贅沢はできないまでも、妻の恵子さん(仮名・63歳)と国内旅行をしながら、安定した老後を送る計画を立てていました。

 

しかし、定年前、長女の真由美さん(仮名・35歳)に子どもが生まれたことで、支出の状況が変わりました。 真由美さん夫婦は都内の賃貸マンションに暮らし、共働きで生活していました。

 

隆さんは「若い夫婦は生活が大変だろう」と考え、妻の恵子さんに相談をせず、すべて自分の独断で金銭的な援助を始めました。

 

初節句の兜に20万円、1歳の誕生日にはブランド物の子供服、クリスマスには大型の知育玩具などを購入しました。 イベントのたびに高価なプレゼントを贈り、真由美さんも最初は「お父さん、悪いわよ」と遠慮していましたが、次第に「今度はこれが欲しいな」と隆さんに要求することも日常化していきました。

「じぃじが出してやるぞ」拡大していく援助

孫が3歳になった際、真由美さんからある夢を聞きます。

 

「私たちは授かり婚で結婚式を挙げていないから、子どもが物心ついた記念にリゾートウエディングをやりたいと考えているの」

 

それを聞いた隆さんは、退職金の残高を考慮し、恵子さんの意見を聞かずに提案をします。

 

「それならハワイはどうだ? 私が全部出すから、旅費の心配はいらない」

 

隆さん夫婦、真由美さん夫婦とそのきょうだい、義息子夫婦、 tenderそして孫の10人でハワイへ行き、挙式を執り行いました。 航空券やホテルの宿泊費、現地での食事代などはすべて隆さんが独断で支払い、総額は約350万円になりました。 しかし隆さんは、まだ2,000万円以上の残高があるため、問題ないだろうと判断していました。

 

その後も、金銭的な援助は続きました。 真由美さんが「お金があれば、お受験というのも考えたい」と言ったのを聞けば、「俺にまかせておけ。ただ母さんには内緒だぞ」と、幼児教室の月謝、月8万円を負担することに。 隆さんは「孫の将来への投資。安いものだ」と考えていたといいます。

 

隆さんの中では孫が最優先でした。 孫から「じぃじ、次はいつハワイ行く?」と聞かれたら「来年も行こうね」と答えます。 すべてはかわいい孫のためでした。