(※写真はイメージです/PIXTA)
大金の喪失と家庭不和
佐藤さんの投資額も、次第に歯止めが利かなくなっていきました。
「200万円あった元手は、1年が経過する頃にはマイナスに転じていました。普通ならそこで立ち止まるべきですが、私は『一度大きく勝てばすべて取り戻せる』と考え、退職金が預けられている口座から500万円を追加で引き出してしまったのです」
追加した資金も、高リスクなレバレッジ取引によって、瞬く間に目減りしていきました。市場の急激な変動に対応できず、証券会社から強制的に決済される「ロスカット」を何度も経験したといいます。
「損失が膨らむ恐怖から逃れるために、さらに資金を投入するという悪循環に陥っていました。最終的には、退職金の多くを失ってしまった」
当初、これらの投資は妻・凪子さん(仮名、62歳)には内緒で行っていたそうです。「投資なんて絶対やめて」と止められそうだから、というのがその理由。しかし、大きな損失を出し、このまま黙っているわけにはいかなくなりました。
「あんなに怒った妻を見たのは初めてでした。当然といえば、当然です。今も必要最低限しか口をきいてくれませんが、仕方がありません。長い時間をかけて信頼を得るしか……」
現在、佐藤さんは週に数日、地域のシルバー人材センターを通じてマンションの清掃業務を行い、月数万円の収入を得て貯蓄に回しているそうです。
投資は資産を増やす手段になり得る一方で、仕組みやリスクを正しく理解しなければ、高齢期の生活基盤を根底から揺るがす要因となります。偶然の成功を自分の実力と過信しないこと、そして失ってはいけない老後資金には決して手をつけないという確固たる姿勢が大切です。