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今年の帰省費用の皮算用
「お盆って、毎年帰省しなきゃダメなの?」
東京都内のマンションで夕食を終えた直後、野村達也さん(40歳・仮名)は、妻の美咲さん(38歳・仮名)からそう切り出されました。
「いや……親も楽しみにしてるし」と返しながらも、内心では同じことを考えていました。野村一家は夫婦と小学生の子ども2人の4人暮らし。帰省先は関西。例年は東京駅から新幹線を利用し、2泊3日で義実家に泊まります。
これからチケットを取るとして——達也さんがスマートフォンで調べてみると、その金額は想像以上でした。
交通費往復(家族4人):約9万2,000円
現地のレンタカー:1万8,000円
手土産:8,000円
高速道路・ガソリン代(移動分):5,000円
合計:約12万3,000円
「これ、去年より高いなぁ……」
達也さんの月収は45万円、手取りにすると35万円ほどです。そこから月12万円の住宅ローンと、教育費(習い事)月3万円がひかれます。月5万円ほど貯蓄に回せているものの、大きな出費があるときは赤字になることもしばしば。夫婦共働きでなければ、とても生活を安定させることはできません。
一方、美咲さんは冷静でした。
「12万円の出費……大きいよね。チケットは高いし、移動だけで半日つぶれるし」
昨年の帰省では、東京駅の混雑でホームに着くまで30分以上かかりました。さらに猛暑のなか、義実家の最寄り駅から徒歩15分。到着した時点で、子どもたちはぐったりしていたといいます。
「今年も暑いっていうし。お義母さんのところにいっても涼しい家に閉じこもって。高いお金払って引きこもるのって、お金の無駄じゃない?」
気象庁によると、東京の8月の最高気温は30年前の1996年は30.0度。2006年は31.1度、2016年は31.6度。2021年は31.6度、2022年は32.0度、2023年は34.3度、2024年は33.6度、2025年は34.4度——親世代が子どもだったころに比べて、夏の暑さは、確実に厳しくなっています。
また達也さんが最も恐れていたのは、母・智子さん(66歳・仮名)の反応です。年に2回のお盆と正月の帰省。会うたびに「本当にかわいい」「孫が私の生きがい」と話す人。帰省を取りやめたいと言えば、落胆されるに違いない。達也さんはそう思い込んでいたのです。
数日後、意を決して電話をかけます。
「今年なんだけど、暑さもあるし、交通費もかなり上がってて……」
言い終わる前に、智子さんは意外な声を上げました。
「いいじゃない! 無理して帰ってこなくていいわよ」
達也さんは耳を疑いました。
「もちろん会いたいけれど、何も混んでいるときに帰ってこなくてもね。去年なんて駅まで迎えに行くだけで汗だく。あなたたちも疲れてたでしょう? よく言ってくれたわ」
智子さん曰く、孫に会えるのは嬉しいけれど体力的にきつく、野村さん家族が帰ったあと、いつも1〜2日くらい疲労で動けないのだといいます。