不動産価格の高騰が続く都心部において、背伸びをして住宅ローンを組んだ世帯が、その後の環境変化によって家計の危機に瀕するケースが少なくありません。ある会社員の事例を通して、持続可能な住居費のあり方について考えていきます。
都心のマンションさえ買わなければ、こんなに苦労することはなかったのに…「年収920万円」45歳サラリーマン「毎月25万円」が消える「フルローン」の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収920万円でも家計に余裕がない理由

「あのとき、周囲の言葉を鵜呑みにせず、自分の身の丈に合った選択をしていれば、こんなに毎月の支払いに追われることはなかったはずです」

 

都内・IT企業に勤務する織田崇さん(45歳・仮名)は、自身の選択を悔やみます。現在、織田さんの額面年収は920万円です。同世代の平均を上回る収入を得ているものの、家計に余裕はありません。原因は、コロナ禍前に買った、都心のマンションの住宅ローンです。

 

当時、織田さんは30代後半で、第1子が誕生するのを機に物件を探していました。気に入った物件の価格は7,800万円。当時の年収からすると、年収倍率は10倍を超え、明らかに予算オーバーでした。自己資金を手元に残したかった織田さんは諦めようとしましたが、不動産会社からの「織田さんなら、フルローン、いけますよ」という言葉に乗った結果、頭金なしのフルローン、かつ変動金利で借り入れができたといいます。

 

毎月の返済額は約23万円。これに管理費や修繕積立金を加えると、住居費だけで毎月約25万円が口座から引き落とされる計算です。

 

「フルローンとはいえ共働きでしたし、これから給与も増えると考えていました。低金利が続いていたこともあり、問題なく返済できるだろうと楽観視していたのです」

 

しかし、購入から間もなくして、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い社会環境が一変。織田さんの会社でもリモートワークが導入され、残業代が大幅に減少しました。さらに、同業他社で働く妻の収入も一時的に落ち込み、世帯収入は当初の想定を下回ることになりました。

 

その後、織田さん自身の本給は回復し、現在の920万円まで上昇したものの、家計の負担感はむしろ増しているといいます。背景にあるのは、昨今の物価高騰と生活環境の変化です。

 

「給与は上がりましたが、それ以上に物価高が響いています。最近は、子どもの成長に伴う教育費の負担も実感しています。何より、マンションの修繕積立金が値上げされたことが誤算でした」

 

織田さんのように、マンションの管理費や修繕積立金の想定外の値上げに直面し、家計が圧迫されるケースは近年増えています。

 

国土交通省『令和5年住生活総合調査』によると、住宅ローンのある持ち家世帯のうち、住居費負担について「ぜいたくを多少がまんしている」世帯が25.8%、「生活必需品を切りつめるほど苦しい」世帯が7.2%に上っています。さらに、この両者の割合は前回(平成30年)の調査からいずれも増加しています。