不動産価格の高騰が続く都心部において、背伸びをして住宅ローンを組んだ世帯が、その後の環境変化によって家計の危機に瀕するケースが少なくありません。ある会社員の事例を通して、持続可能な住居費のあり方について考えていきます。
都心のマンションさえ買わなければ、こんなに苦労することはなかったのに…「年収920万円」45歳サラリーマン「毎月25万円」が消える「フルローン」の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

金利上昇の足音と平均月給との乖離

さらに、織田さんを追い詰めめているのが、金利上昇への不安です。 日本銀行による金融政策の修正を受け、国内の金融機関は相次いで短期プライムレートを引き上げており、変動金利型の住宅ローン金利にも上昇の兆しが見え始めています。

 

厚生労働省『令和5年 賃金構造基本統計調査』によると、大企業に勤める45〜49歳男性の平均月給は約51万円となっています。織田さんの収入はこれを上回る水準ですが、毎月確実に25万円が住居費として差し引かれる構造は、手取り収入に対して過大です。

 

「もし金利がこのまま上昇すれば、毎月の返済額はさらに数万円膨らむ可能性があります。現状でもボーナス返済に頼っている状況。これ以上の負担増には耐えられません」

フルローンがもたらす売却の壁

織田さんはマンションを売りに出して住宅ローンを完済し、郊外の賃貸へ引っ著すことも検討したといいます。しかし、ここでもフルローンの弊害が立ちはだかります。

 

「現在、6,000万円ほどの残債があります。フルローンのため、結構残っているんですよね……昨今の不動産価格の上昇を受けて、このマンションも1億円強で売れるそうです。正直、賃貸という選択肢なく、残ったお金で新たにマンションを買うのも難しいため、何とか住み続けるしかない、というのが今のところの結論です」

 

「年収920万円」という数字は、世間一般では十分なゆとりがある世帯と映るかもしれません。しかし、実際は過去の無理な選択によって生み出された、毎月25万円の固定費という重い負担に縛られた生活です。

 

「当時は金利が上がるなんて思ってもいませんでした。『あなたなら大丈夫ですよ』と言われて、何も疑うことなく信じてしまった。あのとき、背伸びして都心のマンションなんて買わなければ、こんなにも苦労しなくてよかった……本当、後悔ばかりです」

 

織田さんは現在、支出の見直しを進めるとともに、金利上昇局面に備えたシミュレーションを重ねています。しかし、一度組んでしまった大規模なローンの構造を根本から変えることは容易ではありません。住宅購入における「いくら借りられるか」という金融機関の基準と、「いくらなら無理なく返せるか」という個人の生活実態には乖離があることを、十分に理解しておくことが必要です。