(※写真はイメージです/PIXTA)
国内で「100兆円」にのぼるタンス預金の実態
銀行などの金融機関に預けられず、自宅に保管されている現金、いわゆる「タンス預金」の規模は、日本国内で非常に大きなものとなっています。
日本銀行『資金循環統計』によると、日本の家計が保有する現金・預金は1,000兆円を超える高水準で推移しています。なお、家計が保有する現金のうち、自宅で保管されている「タンス預金」は公式統計では把握されていませんが、民間では100兆円前後との推計もあり、その規模は国の一般会計予算に匹敵するとされています。
多くの高齢者が「手元にあれば安心」「いつでも使える」という理由で現金を自宅に置きますが、このタンス預金には非常に高いリスクが伴います。特に懸念されるのが、今回の高橋家のような「相続発生時のトラブル」です。
遺言書もないまま、タンスに隠された現金を特定の相続人が勝手に受け取ることは、法的に大きな問題を引き起こします。一般的に、亡くなった人の財産は「相続財産」となり、すべての法定相続人で正当に分け合う必要があります。もし和也さんが正雄さんの意向通りに1,500万円を独り占めしようとすれば、事実を知った陽子さんとの間で激しい遺産分割論争に発展することは避けられません。親族間の関係修復が不可能になる事例は非常に多いのです。
さらに、大きく考えておきたいのが「税務署の調査」です。タンス預金は銀行の口座履歴に残らないため、「税務署に把握されないだろう」と誤解されがちですが、実際にはそうではありません。
国税庁『相続税の調査事績』によると、税務調査で発見される申告漏れ相続財産の内訳では、「現金・預貯金等」が毎年最も大きな割合を占めています。そのため、申告されていない現金やいわゆるタンス預金は、相続税調査において重要な調査対象のひとつとなっています。
税務署は被相続人の預金取引履歴だけでなく、必要に応じて相続人や親族の預金状況などについても調査を行います。収入や資産の推移と預金残高との間に不自然な点が見られる場合には、その資金の行方について確認が行われることがあるのです。その結果、隠していた現金が見つかれば、本来納めるべき相続税に加えて、重加算税や延滞税などの重いペナルティが科されることになります。
家族のトラブルを防ぐための現実的な解決策
高橋さんのケースでは、姉に秘密を知られたことで一時は一触即発の事態となりましたが、和也さんが冷静に、専門家を交えて財産をオープンにする話し合いを進めることになりました。
「姉に会話を聞かれ、お金の存在がバレた瞬間は頭が真っ白になりました。父が良かれと思って残した現金が、一瞬で家族を壊すことになるとは……」
和也さんは当時の緊迫感をそのように振り返ります。
高齢の親が良かれと思って抱え込んでいるタンス預金は、残された家族にとって最大の火種になりかねません。親が元気なうちに家族間で財産の現状を共有し、財産の「見える化」や遺言書の作成など、法的に正しい手続きを進めておくことが、不要なトラブルを避けるポイントになります。