老後の住まいの選択は、その後の夫婦のあり方を大きく左右します。内閣府の「令和6年度 高齢社会対策総合調査」によると、60歳以上の高齢者の現在の住まいは「持家(一戸建て)」が78.2%、「持家(分譲マンション等)」が3.5%と、全体で81.7%が持家に住んでいます。一方で、将来のしがらみを避けて身軽な「賃貸住宅」を選ぶ人は12.3%にとどまります。 現役時代はお互いの生活サイクルが異なり、管理が楽で合理的な選択だったコンパクトな賃貸暮らし。しかし、定年退職によって夫婦が1日24時間、手狭な空間を共有することになったとき、その「身軽な住まい」は思わぬ逃げ場のない密室へと変貌することがあります。 熟年離婚に至った一組の夫婦の事例をご紹介します。※事例の人物名は仮名です。
ごめん、ぶっちゃけ俺が耐えられんかった…定年退職後の「四六時中膝を突き合わせる」夫婦生活。65歳夫が妻のスマホをブロックして家出したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

 LINE一通に込められたメッセージ

そんな息苦しい定年生活が始まって数ヵ月が経ったある朝、限界を迎えたユウジさんは、ミサトさんに「ちょっと散歩に出てくる」とだけ言い残し、小さなリュックを背負って家を出ました。

 

お昼を過ぎても戻らない夫をミサトさんが不審に思ったころ、ユウジさんから一通のLINEが届きました。

 

「ごめん、ぶっちゃけ俺が耐えられんかった」

 

驚いたミサトさんが「どういうこと?」「どこにいるの?」とメッセージを連投し、何度も電話をかけました。

 

しかし、コール音は一切鳴らず、メッセージに既読がつくこともありません。ユウジさんはそのLINEを送信した直後、ミサトさんのアカウントと電話番号をブロックしてしまったのです。

 

ユウジさんはそのままビジネスホテルを転々とし、ミサトさんの手が届かない場所へ消え去りました。明確な浮気や借金といった理由ではありません。ただただ、「妻と二人きりでいる生活」に対する、限界を超えた拒絶の末の強行突破でした。

 

のちに、子どもを介してユウジさんの家で直後のお互いの様子や近況を知るところとなり、最終的に二人は合意のうえ、離婚に至りました。

 

ユウジさんは「俺が変なんだろうか。長年連れ添った妻をこんなに嫌になってしまうなんて」と自問自答しています。

 

二人きりの老後。理想は「最期まで連れ添って穏やかに」でしょう。しかし現実には、「無理なく暮らせる距離」が重要なのかもしれません。

 

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