生命保険文化センターの調査によれば、介護期間が約15年に及んだ場合、将来的に必要となる総費用は3,200万円を超えるというデータも存在します。「親の年金と実家」を“いつでも帰れる安全地帯”と思い込んでいると、ある日突然、その前提が崩れ去ることも少なくありません。月14万円の年金をアテに海外を放浪していたジョージさん(仮名・52歳)を待ち受けていた、取り返しのつかない結末とは。
「俺の家は?」年金月14万円・実家の母をアテに〈バックパッカー生活〉を続ける52歳長男…1年ぶりの帰国で「家は売った」と宣告され絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

施設入居のため実家を売却…20年のキャリアブランクを抱えた長男の現実

「なんでそんな大事なこと、俺にいわないんだよ! またしばらく実家に居候するつもりだったのに」と放つジョージさんに、サトミさんはため息をつきました。

 

「何度も連絡したけど、ずっと音信不通だったじゃない。うちには泊められないから、自分でどうにかして」

 

唯一の帰る場所だった実家すら失ったジョージさん。現在は1泊数千円の安いカプセルホテルやネットカフェを転々としながら、これまで通り日雇いや単発のアルバイトでその日暮らしを続けています。

 

しかし、実家という「家賃ゼロの拠点」がなくなったいま、稼いだ金は日々の宿泊費と食費に消えていきます。52歳にして初めて、この自由な放浪生活は「親の年金と実家」の上に成り立っていたことに気づき、自身の考え方を見つめ直しています。

 

実家は“一生安泰”ではない…「親頼みの人生設計」の落とし穴

「いざとなれば実家があるし、親の年金があればなんとかなる」と高を括っていたジョージさん。しかし、実際のデータに照らし合わせると、その考えがいかに現実逃避した甘いものであったかが浮き彫りになります。

 

介護問題が現実味を帯びてくると、親世代であるシニア層はその多くが資金面に不安を抱いています。内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、今後の生活において経済的な面で不安に思うこととして、「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」が43.1%、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」が36.6%に上っています。

 

そして、この不安を裏づけるようなデータがあります。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」によれば、要介護状態となった場合に必要と考える資金総額(初期費用と月々の費用の合計)の平均は、実に3,298万円に達すると示されているのです。

 

つまり、母親の月14万円の年金だけで将来の介護・施設費用をすべて賄うことは不可能に近いということです。不足分を補うために実家を現金化するという判断は、母親を守るための理にかなった防衛策であったと考えられます。

 

「親の家(実家)」は、いつまでもそこにある都合のよい居場所ではありません。親が要介護状態になった途端、実家という資産はいとも簡単に「親自身の介護費用」へと姿を変えてしまいます。

 

「実家があれば一生安泰」と信じ、自らの経済的基盤を築くことを怠ってきたジョージさん。親の資産をアテにした生活がいかに脆く、リスクがあるのかを如実に示唆しているといえるでしょう。

 

[参考資料]

内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」

 

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