少子高齢化が進む日本において、老後の安心を担保するための選択肢である老人ホーム。その費用はピンキリですが、高額な費用を支払えば必ずしも理想の生活が手に入るわけではありません。今回は、多額の入居金を支払いながらも想定外の事態に直面した女性のケースをみていきます。
もう誰も信じない…〈入居金3,000万円〉高級老人ホーム入居の80歳女性。優雅な日々のはずが、2ヵ月で退去を決意。原因は人気のないダイニングで見た「まさかの光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

ここに安心・安全はない…わずか2ヵ月での決断、高すぎる勉強代

「老人ホームでいじめ!?」と思うかもしれませんが、バックボーンの異なる人が共同生活を送る以上、トラブルはつきもの。性格の不一致や認知症の症状、さらには集団生活によるストレス、自分のテリトリー(空間)が保てないことへの不満も引き金になります。

 

佐藤さんは運営会社に現状を相談したものの、担当者は「入居者様同士のトラブルには介入できない」と説明するだけで、具体的な対応は取られませんでした。

 

「入居時に高い一時金を払い、毎月高額な管理費を払っているのに、精神的な安心すら得られない。それでは割に合わない。それなら自宅に戻ったほうが心穏やかに過ごせると思ったんです」

 

結果として、佐藤さんは入居からわずか2ヵ月で退去を決意します。しかし、ここでさらに高い壁が立ちはだかりました。「返還金」の問題です。

 

多くの有料老人ホームでは、入居時に支払った一時金のうち、一定割合が「初期償却」として即座に償却され、残りが想定居住期間に応じて返還される仕組みになっています。

 

佐藤さんのケース:

入居一時金:3,000万円

初期償却(20%):600万円(入居時に即座に償却)

その他差し引き:2ヵ月分の利用料や解約手数料など

 

結果、手元に戻ってきたのは2,300万円ほど。わずか60日ほどの滞在で、700万円近くを失う計算になります。

 

「わずか60日の滞在で700万円……1泊10万円以上。勉強代にしても、高すぎました」

 

国民生活センターの窓口には、こうした有料老人ホームの「契約・解約に関するトラブル」の相談が毎年数千件規模で寄せられています。外部の目が届きにくい施設内では、一度人間関係に問題が生じると、入居者が逃げ場を失うリスクがあります。

 

老人ホーム選びの際、見学は必須とされますが、人間関係のトラブルの有無については見抜くのが難しいもの。
それでも、共有スペースの様子や、スタッフと入居者との距離感、トラブル時の対応方針など、事前に確認することが重要です。