(※写真はイメージです/PIXTA)
削られていく老後資金
実家を出られない佐藤さんを、さらなる現実が襲います。維持費の負担です。築60年の家は各所の傷みが激しく、屋根からの雨漏りが発生しました。最低限の補修だけでも数十万円の出費となり、さらに毎年5月には固定資産税の通知書が届きます。佐藤さん自身の預貯金は、介護離職中の生活費の補填や、母親の葬儀費用の自己負担分などで、すでに大きく減少していました。現在の佐藤さんの収入は、近所のスーパーでのパート代である月約12万円のみです。
「母の介護中は、母の年金があったので暮らせていました。今は自分のパート代だけで、家を維持するためにお金が消えていきます」
厚生労働省『雇用動向調査』によると、2024年には約9.3万人が介護や看護を理由に離職しています。仕事を辞めることで定期収入が失われ、一度キャリアを中断した後の再就職は容易ではない現実があります。また、将来の年金額が減少し、生活が成り立たなくなるリスクも孕んでいます。
「親の面倒を最後まで見た結果が、このボロボロの家と、減り続ける通帳の残高だけなんて……あんまりです」
親の介護という役割を果たしたあとに、想定していなかった実家の処分問題や親族間の主張の食い違いに直面し、生活の再建が遅れてしまう――。実家の相続問題は、単なる不動産処分の問題ではなく、遺された家族のその後の生活基盤を揺るがす課題です。
生前から親を含めた家族間で不動産の処分方針や具体的な費用負担について共有しておくこと、そして自治体の空き家相談窓口や法テラスなどの無料相談を活用し、早期に専門的な助言を得ることがリスクを回避するためのステップとなります。