住宅価格の高騰が続くなか、夫婦の収入を合算して高額な融資を受ける「ペアローン」のリスクを警告する声は少なくありません。しかし、この仕組みは組み方と事前のリスクヘッジ次第で、単独ローンにはないメリットを受けられることもあります。ある夫婦の事例から、今どきのマイホーム戦略をみていきましょう。
ペアローンにして本当によかった…〈年収800万円〉39歳夫、周囲の反対を押し切り「1億円のタワマン購入」が正解だった納得のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

都内の大手メーカーに勤務する一ノ瀬敏郎さん(39歳・仮名)は3年前、妻の真由美さん(38歳・仮名)、そして現在は5歳になる長男とともに、都心の新築タワーマンションを購入しました。

 

「当時は周囲から『夫婦で大金を借りるのは危険だ』と猛反対されましたが、結果的に私たちの場合は正解でした」

 

購入当時の物件価格は1億2,000万円。一ノ瀬さんの年収は800万円、外資系企業に勤める真由美さんの年収は700万円でした。夫婦は貯蓄から2,000万円の頭金を支払い、残りの1億円をペアローン(変動金利・35年返済)で借入します。負担割合は一ノ瀬さんが6,000万円、真由美さんが4,000万円で、毎月の返済額は合計で約26万2,000円でした。

 

ペアローンを選択した最大の理由は、それぞれの名義で「住宅ローン控除」の適用をフルに受けるためです。

 

「夫婦それぞれが年末ローン残高の0.7%の税額控除を13年間受けられるため、還付金は毎年の金利負担を大きく上回りました」

「もしも」の事態が発生。そのとき破綻しなかった理由

多くの世帯が「共働きの維持」を前提にペアローンを組むのに対し、一ノ瀬さん夫婦は「どちらかが働けなくなるリスク」を前提に資金計画を立てていました。

 

その想定は、購入から2年後に現実となります。真由美さんが体調を崩し、治療のために会社を退職せざるを得なくなったのです。世帯年収は1,500万円から、一ノ瀬さん単独の800万円へと激減しました。通常であれば家計破綻の危機ですが、一ノ瀬さん夫婦に焦りはありません。

 

「妻のローン分は、三大疾病保障付きの団体信用生命保険(団信)に加入していました。所定の診断が下りた時点で、妻の分の残債約3,800万円はすべて免除されたんです」

 

残されたのは、一ノ瀬さん名義のローン(2年経過時点で約5,700万円)のみ。毎月の返済額は合計約26万2,000円から、一ノ瀬さんの分の約15万7,000円へと大幅に減少しました。一ノ瀬さんの手取り月収は約45万円であり、この返済額であれば一人だけの収入でも十分に維持できる水準です。

 

「もし私の単独名義で1億円を借りていたら、妻が病気になってもローンは1円も減らず、看病と返済の重圧で生活は行き詰まっていたはずです」