離れて暮らす高齢の親。心配は尽きないものの、経済的にも健康的にも不安なし。どこか「うちの親は大丈夫」と思っている人も少なくないでしょう。しかしある日、「まさか」の事態は起きるものです。突然緊急搬送され、医師から「あと少し遅かったら……」と言われたある女性のケースから、1人暮らしの高齢の親に潜む落とし穴について考えます。
〈年金月20万円〉1人暮らしの78歳父が緊急搬送…医者「もう少しで手遅れでした。それにしても――」なぜ父は“119番”に電話しなかったのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

「なぜご自身で119番しなかったのですか」医師の疑問

「病院に駆けつけたとき、お医者さんから『軽い脱水症状も見られました。もう少し発見が遅れたら、大変なことになっていたかも』と言われました」

 

そう語るのは、都内のメーカーに勤務する高橋美咲さん(49歳・仮名)です。事の始まりは、地方で1人暮らしをしている父親の正雄さん(78歳・仮名)が、自宅の敷地内で動けなくなり、救急搬送されたという連絡が入ったことでした。

 

地元有力企業で働いていた正雄さん。十分な退職金をもらい、月々の年金は20万円。しかも健康が取り柄と近所でも評判になるくらいだったので、「正直、父が緊急搬送されたと聞いたときは、本当に驚いて……」と美咲さんは話します。

 

その日、正雄さんは自宅の庭先で重い荷物を持ち上げた際、激しいぎっくり腰を起こし、その場に座り込んでしまいました。激痛で1歩も歩けず、自力で這(は)って室内に戻ることもできない状態でしたが、幸いにも、回覧板を届けに通りかかった近所の住民が正雄さんに気づきます。その住民が自身のスマートフォンから119番通報をしたことで、正雄さんは病院へ搬送されました。搬送先の医師による処置が終わり、高橋さんが病室の前で説明を受けた際、次のように尋ねられたと言います。

 

「先生から『お父さん、なぜご自身で救急車を呼ばなかったのでしょうか。手にスマートフォンを持っていたのに』と」

 

正雄さんは意識もしっかりしており、上着のポケットにはスマートフォンを入れたままでした。手元に端末があり、手も自由に動かせる状態だったにもかかわらず、自ら通報しなかった点に医師は疑問を抱いていたのです。