老後のお金の不安が語られることが増えた現代。その一方で、表には出さず、静かに資産を築いている高齢者も存在します。周囲から見れば「質素な年金生活」にしか見えないのに、実際には「億超え」の金融資産を保有している――。そんな“ステルス・リッチ”と呼ばれる生き方を選ぶ70代男性。彼が資産を隠して暮らすのには、ある理由がありました。FPの小川洋平氏が詳しく解説します。
「他人の妬みが、一番怖いんだよ」…〈資産1億円超〉でも値引きシール付き「半額寿司」に喜び、コンビニでバイト。72歳男性が「あえて普通の年金暮らし」を貫くワケ【CFPが解説】
お金があるからこそ「あえて節約、あえてアルバイト」を楽しめる
逸男さんの場合、実際には配当収入だけで夫婦の生活費をほぼ賄える状態であり、年金もあるため、資産は今も減るどころか増え続けています。しかし彼にとって、“資産を隠すこと”は、自分と家族の平穏を守るための戦略でもありました。
それともう一つ。逸男さん夫婦にとっては、「いかに賢くお得に生活するか」は、我慢ではなくゲームのような楽しみでもありました。
「確かに資産を隠して、トラブルから身を守りたいのもあります。でもね、実は『お金がない』って思うほうが、工夫しがいがあって面白いんです。でも、節約もアルバイトも、自分からやってるから苦にならないんでしょうね。もし経済的に差し迫った状態だったら、考え方は変わっていたのかもしれません」
「自分たちが望む生活を実現できるか」
資産運用が広まり、「いつの間にか資産が1億円を超えていた」という人も増えている中、「ステルス・リッチ」と呼ばれる生き方は、合理的で賢い選択肢としてますます増えていくのかもしれません。
ただし、この「ステルス・リッチ」にも注意点はあります。周囲の目を気にするあまり、家族(子ども世代)にまで『お金がない』と嘘をつき通して心配をかけたり、節約に執着しすぎて医療や介護など必要なところにまでお金を渋ってしまっては本末転倒です。
隠すのはあくまで「周囲の雑音から身を守るため」。身内への情報共有や、自分たちの健康のための支出は惜しまない、というメリハリが不可欠です。
また重要なのは、他人と比べることではなく、自分たちが望む生活を実現することができるかどうかです。人の数だけ事情があり、人の数だけ価値観があり、「みんな同じ」である必要はありません。
お金は見栄を張るためではなく、自分らしい人生を送るために使うものです。人からどう見られるかではなく、自分たちの生きたい人生のために活用していくことが大事です。
小川 洋平
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