定年退職などを機に利便性を求めて地方から都市部へ移住する「老後の住み替え」。しかし、長年親しんだ地域のコミュニティを離れ、最新鋭の住環境へ身を置くことが、必ずしも正解とは限りません。子どもの住む東京に移住してきた夫婦(当時65歳)のケースから、8年が経過した現在の生活のリアルと、老後のコミュニティ形成のあり方を見ていきます。
〈老後資金7,000万円〉〈年金月30万円〉70代夫婦、東京移住の誤算。駅近タワマン×バリアフリーの快適さの裏で直面した「恐ろしいほどの静寂」 (※写真はイメージです/PIXTA)

引っ越さない選択…東京都心・タワマンの利便性の中でどう生きるか

東京のドライな人間関係は、二人に孤独感を与えました。

 

「仕事をしていないから、社会との接点がないんですよ。1日のうち、言葉を交わしたのは妻(あるいは夫)だけということもしばしば」

 

移住してきたばかりのころは、ホームシックのような状態になり、地元に帰りたくて仕方がなかったといいます。ただ、売却の手間や年齢的な体力を考えると、再度の引っ越しは現実的ではありません。何より、最新の医療アクセスやバリアフリーという環境自体は、今後の老いを見据えると手放しがたいメリットでもありました。

 

「ここに住み続けるしかない以上、自分たちでどうにかするしかない、と思うようになりました」

 

和男さんが最初に取り組んだのは、行政が募集していた地域のボランティアガイドへの登録でした。

 

「マンションの外に出て週に2回、地域の案内や美化活動に参加するようになりました。東京だって、年寄りは多いですからね、少しずつ、同年代の知り合いが増えていきました」

 

移住から8年目が経過したいま、夫婦はタワーマンションの強固なセキュリティと利便性を享受しつつ、人間関係はすべてマンションの外の地域社会で完結させるという、割り切ったライフスタイルを確立しています。

 

「『帰省の必要がなくなったから経済的に助かる』と子どもたちは言っています。東京移住には、そのようなメリットもあるんですね」