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従来の「適材適所」から、新しい「適所適材」への転換
キャリア自律をめぐる日本企業の動きは、もはや一時的な流行ではありません。ビジネス環境や働き方そのものの構造が変わり、変化の激しい時代に長く働く、個人と会社の関係性が大きく書き換えられつつあることを意味しています。
キャリア自律は、会社と個人が共に生き残るための“新しいスタンダード”なのです。
キャリア自律を支援する施策の中でも、会社が特に力を入れ始めているのが「社内の異動や働き方の自由度」を高める仕組みです。かつての日本企業では、配属や異動は会社が決め、ひとつの会社で職業人生を全うすることが前提でした。突然、辞令1枚で人生が動くというように、社員には選択の余地がほとんどありませんでした。
しかし、働き方が多様化し、専門性の寿命が短くなるにつれ、社員自身が「どのような経験を積むか」「会社とどういう関係を選択するか」を選ばなければ、キャリアを描きづらい時代になってきました。
この流れの中で、社内公募制度、社内FA、ジョブディスクリプション(職務記述書)の整備、複線型人事制度、アルムナイ(卒業生)採用、選択定年、業務委託制度などが一気に進みました。「自分のキャリアを自分で選ぶための判断材料と選択肢」を会社が用意したということです。
どのような役割にどのようなスキルが求められるか、どんな働き方を選べるかを視覚化することで、自己分析を行った社員は、主体的に手を挙げられるようになります。従来の適材適所から、新しい適所適材への転換が始まったといえるでしょう。
キャリア自律を後押しする副業、リスキリング
副業や兼業の解禁も、キャリア自律を後押しする象徴的な動きといえるでしょう。社外で通用する経験を持つことで、人は改めて自分の強みや市場価値を認識できます。副業は単なる収入の話ではなく、「キャリアの主語を自分に取り戻す場」でもあるのです。
そして、リスキリングへの投資も、キャリア自律とは切り離せません。DX、データサイエンス、プログラミング、マネジメント、こうした分野の研修に年間数十億円規模の投資をする会社も、珍しくなくなりました。また、従来のように「入社〇年目研修」という一律の階層別研修より「このスキルを必要としている人向け」という手挙げ方式のテーマ別研修やオンラインでの学び放題が増加しています。
「人的資本経営」の浸透や政府がリスキリング支援を後押ししていることもあり、会社は社員の学び直しを重要な経営戦略・投資戦略として考え始めています。人生が長くなり、働く期間も長くなると、自分のスキルを磨き続ける姿勢が欠かせません。会社がその環境づくりを担うようになってきたのです。
