(※写真はイメージです/PIXTA)
「これまでのやり方が通用しなくなった」40代・営業職の今後のキャリア
たとえば、40代前半の営業職Aさんは、大手メーカーで長年トップクラスの成績を上げてきました。顧客との信頼関係を築く力や現場感覚には自信があり、評価も安定していました。
しかし、営業プロセスにデータ活用やデジタルマーケティングが本格的に導入され始めると、「これまでと同じやり方では成果が出にくい」「このままでは先細りしそう」という違和感を覚えるようになります。Aさんは1on1で上司に相談しました。
「この先、私に対して何ができるようになることを期待していますか?」
「Aさんは経験豊富で顧客理解が強みです。会社としては、その強みを活かして、提案を仕組み化して部署全体の力を底上げする動きを意識してほしいですね」
次の半年で、新しいツールの学習、企画ミーティングや新規プロジェクトに関わる経験を積み、Aさんは「自分で売るだけの人」から「自分でも売れる人」×「組織全体へ価値を設計して提供する人」へとキャリアの幅を少しずつ広げることに成功しました。
Aさんは自分のキャリアを上司に相談し、アドバイスを受け、これまでのスキルを活かしながら新たなスキルとポジションを手に入れたということです。長く生きる、長く働く時代では、このように対話を通じて「学び直す」「自分をアップデートする」というスタンスがとても重要になります。
今や個人と会社は、従来のような一方的な雇用関係ではなく、お互いに「選び」「選ばれる」関係へと移行しています。
終身雇用の崩壊、黒字でもリストラされる時代
かつての日本型雇用は「メンバーシップ型」と呼ばれ、社員を長期育成・終身雇用する前提で設計されていました。会社が新卒一括採用して配属や異動を決め、年功序列的にキャリアのレールを敷くというものです。社員はそのレールに実直に従っていけば、定年まで一定の安定と処遇が約束されていました。これらは、日本経済が安定的に成長し続け、製品寿命が長い時代に適した人材マネジメントでした。
しかし、この仕組みをそのまま維持できる会社は、急速に減っています。会社を取り巻く状況は複雑さと厳しさを増し、もはや、全社員のキャリアを会社が数十年単位で責任を持って支え続けることは、ほぼ不可能になりつつあるのです。
実際、2025年に人員削減を行った上場企業41社中28社(68%)は「黒字リストラ」でした(東京商工リサーチ)。「うちの会社は黒字だから安泰」とはいえない時代に突入しているのです。
そこで個人に求められるのが、「エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)」です。役職、年齢、雇用形態に関係なく、今いる会社から必要な人材として認知されるだけでなく、社外からも必要とされる人材になるということです。
エンプロイアビリティが高い状態なら、今の会社で働き続けることも、転職することも、起業や副業をすることも、自分の自由意思で選択することが可能になります。逆に、これが低い状態だと「今の会社にしがみつくしかない」「納得できない指示にも従うしかない」と色々な我慢をしながら働き続ける以外に、選択肢がありません。一方の会社側は、そうした選択肢を持つエンプロイアビリティの高い人材に選ばれる、「人材の流出しにくい魅力的な会社」であることが求められています。
会社が個人を一方的に管理するのではなく、個人も会社を選び、会社も個人を選ぶ。一見ドライに見える関係ですが、実はとても健全な関係です。
この対等性があるからこそ、人は自分の意思でキャリアを考える必要性に気づき、その考えに基づいて行動することで、人生の選択肢や納得感を拡大させることが可能になります。